舘神龍彦著「手帳と日本人」を読みました。
本書は、
- 手帳評論家の著者が、
- 明治以降の、手帳の特徴を比較することで
- 日本人が時間や社会をどう見ていたか、考えようとする本です。
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このため、手帳の使い方などをまとめた入門書ではありません。
写真も少なく、「こんな手帳があったんだ!」という意外性を求める方には、
あまり向かないと思われます。
また、「神社系手帳」など、著者オリジナルの類型が出てくるものの、
きちんと類型を分けるということもされていません。
近年の特殊な事例については、
「いろいろあります」で逃げていて、
もう少し類型で分ける努力をしてもらっていたら、
手帳についてもっと理解できたかもしれないのになぁ、
とは思いました。
ただし、歴史を書くのは、
中心人物が死んでから50年待たなければ
ちゃんとしたものは書けない、
と言われます。
手帳の歴史も、
現在進行形で発展しているものについては
なかなか書けないものなのかもしれません。
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本書の内容で面白かったところを、目次から抜粋していきます。
第1章 手帳以前の時間感覚
- 日本人はいつから時間にうるさいのか?
- 暦が世界を支配する
第2章 手帳が示す行動規範
- 手帳はいつから生まれたのか
- 軍隊手牒から年玉手帳へ
第3章 手帳にあやかる人々
- 自己啓発化する手帳
- 新世代の定番手帳
第4章 手帳大国ニッポンの実像
- 最新ニッポン手帳事情
- 「手帳の日本史」は何を語るか
第5章 グーグル的な時間からの自由へ
- ライフハックで時間を操作する
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わたしなりにまとめると、
手帳とは、操作しづらいものを、紙の上で操作するもの
なのかなと思いました。
時間は見えないので、管理するのが難しいわけです。
最初のうちは、「タイムタイマー」という、
時計で時間を管理する方法もあります。
が、効率が悪いです。
(市販のタイムタイマーは、60分とか100分までしか管理できません)
そういうときに、手帳という紙の上で操作することで、
見通しが良くなるということだと思うんです。
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時間以外にも、操作しづらいものはあります。
たとえば、体験型のコレクターです。
ふつうのコレクターは、たとえば切手コレクターは、
切手という実物を持っていることができます。
しかし、体験をコレクションしたいひとは、
体験そのものは、記憶の中にしかないので、
「実物」というものもありません。
全国の飲食店を食べ歩くことが趣味だとすれば、
食事じたいは、写真を撮れば良いわけですが、
そのときの味の感想とかは、どうしても記憶の中であいまいになっていきます。
ロフトで売っている「ワナドゥ手帳」とは、
こういう体験を操作するための手帳なんじゃないでしょうか。
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なお、わたし自身は、
GMOインターネットの株を買ったことをきっかけに、
熊谷社長の本を知りました。
なので、本書の言い方では「自己実現的な」手帳から使いはじめ、
普通の手帳の使い方は、後から学ぶことになりました。
今年使っているのは、
タナベ経営の株主優待手帳(ブルーダイヤリー)です。
しかし、タナベ経営が今年で優待廃止となりましたので、
来年以降はシステム手帳に戻ろうと思っています。
ちなみに、
これからシステム手帳を使い始める方にオススメは、
ファイロファクスのクリップブックです。
- システム手帳にしては安い(定価でも3000円で買える)
- ポップな多色展開
- リングが大容量
ちょうどいい手帳が無くて困っているの方は、ぜひチャレンジしてみてください。
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なお、本書で少しだけ気になったのは、
バレットジャーナルに触れられていないことです。
わたしとしては、デジタル手帳よりも、
バレットジャーナルの方が、紙の綴じ手帳に近いイメージでした。
デジタル手帳との比較をするぐらいなら、
バレットジャーナルと綴じ手帳の比較をする方が、
面白い考察ができたのではないかと感じました。
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本書は、手帳について考え始めるきっかけにはなる本だと思います。
手帳
マニアの方々は、ぜひ一度読んでみてください。
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