森博嗣著「アンチ整理術」を読みました。
本書は、整理術の、反対です。だから、アンチ整理術です。
まえがきは、「森博嗣は天の邪鬼である」から始まります。 整理術の本を書いてほしい、という要望に対して、「整理術の反対の本」を書いてしまったわけで、たしかにあまのじゃくでしょう。
ただ、内容としては、整理を中心に据えながらも、多様なものの見方が語られていて、ある意味、断捨離(やましたさん)とか、ときめき(こんまりさん)よりも、もっと抽象的なところに行きついている本だと思いました。
本書は、8章で構成されています。
- 整理・整頓は何故必要か
- 環境が作業性に与える影響
- 思考に必要な整理
- 人間関係に必要な整理
- 自分自身の整理・整頓を
- 本書の編集者との問答
- 創作における整理術
- 整理が必要な環境とは
目次を見ると、結構、お堅いイメージですね。もともと大学教授だったそうなので、そうなるのかもしれません。
ただ、内容としては、具体例をまじえて書かれており、森さんの子供のこととか、親のこと、上司や後輩のことも一部書かれているので、完全に現実から遊離した内容になっているわけではありません。
特に、森さんは、大学教授をやっていたとき、大学に来れなくなった学生や、会社に行けなくなった卒業生へアドバイスをする立場にありました。
その時のエピソードは、多くの人に役に立つ内容ではないかと感じました。
とはいえ、本書は、抽象的です。特に、第5章の「自分自身の整理・整頓を」あたりは、どちらかというと自己啓発に近い内容になっていると思います。
(いや、そもそも整理術は自己啓発かもしれませんが)
本書の編集者との問答についても、なんというか、途中から人生相談みたくなってきており、
- 本当に整理術の本なんですか?
- 編集者はこの態度で良かったんですか?
と、多方面から吊し上げにされかねない内容になっています。
なので、ちょっとややこしい言い方になりますが、本書は、「整理術について考える本」なのではなく、「整理術について考えることを通して、人生について考えさせる本」になっています。
不思議な本ですね。
ミニマリストを目指す人は、そのかっこ良さを目指しがちですが、(もちろん、それはそれで大事だと思いますが、)その前に、その整理するという行為が、何のためなのか?というところについて考えてみると、また違う展開が開けるのではないかと思うのです。
とはいえ、これ以上本書をオススメするのは、息子さんにプラモデルの作り方を教えた森さんのようになるかもしれないので、やめておきたいと思います。
本書は、決して万人受けしません。
きっと、伝わる人に、伝われば良い本として書いたんだろうな、と思います。