ピータードラッカー著「ドラッカー名著集1 経営者の条件」を読みました。
本書は、経営学の神様みたいな存在であるピータードラッカーの著書で、
彼の名著集で、1冊目に掲げられている本です。
本書の原題は、「エフェクティブ・エグゼクティブ」で、韻をふんでいます。
直訳すれば、「有能な実行者」なのでしょうが、
訳者である上田さんは、「できる人」と、訳しています。
つまり、翻訳書のタイトルは、「経営者の条件」となっているものの、
実際の中身は、「できる人」について書かれている本、ということです。
決して、経営者だけが読む本ではない、というところがポイントです。
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本書に書かれていることは、実は、
近年のビジネス本に書かれていることと、
それほど違いがないです。
なので、文章を読んでみて、自分に合わないような感じのする人にとっては、
無理に本書を読む必要はないと思います。
時間の使い方は練習によって改善できる。だがたえず努力をしないかぎり、仕事に流される。したがって次に来る一歩は体系的な時間の管理である。時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除していくことである。そのための方法は、三つある。
その3つというのは、以下のことです。
- 成果を生まない仕事を捨てる
- 他の人がやれることは、その人に任せる
- 他人の時間を浪費することを辞める
ここで言っていることは、ビジネス書によくある、フツーのことなのですが、
本書は、古典で名著であるだけに、やや持って回った感じが、しなくもありません。
こういう文章が好きな人は、そのまま読めばいいし、
そうでない人は、もっとかみ砕かれた本を読んでみるのが良いです。
確認しておきたいのは、どちらかが優れていて、
どちらかが劣っているということではない、ということです。
優劣の問題ではなく、純粋に、
私たちは好みによって、どちらも選べるということです。
そういう、豊かな時代に、私たちは生きています。
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本書は、なんといっても、ドラッカーが書いた本です。
ドラッカーが大好きな人々にとっては、
神様が書いた本といっても差し支えないぐらい、名著なのです。
特に、取引先の社長などが、ドラッカーマニアだったりした場合は、
本書を読んでいくと、話の幅が広がるでしょう。
さらに、かつて、経営学を創始し、確立したひとが、
いったい何を根拠に、どんな考えをもっていたのか。
その始まりについて知ることができるというのは、とても価値のあることだとも思います。
とはいえ、それだけに、さまざまな本に影響を与えています。
その影響下にある本を読んでも、同じ結果を得られるでしょう。
結果が同じであれば、どのような道をたどるのも自由だと思います。
古典をあまりにもあがめるのは、わたしは好きではありません。
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本書は、7章で構成されており、最初と最後に、序章と終章が置かれています。
個人的に、好きだった小見出しを、以下まとめてみます。
序章:成果をあげるには
- アクションプランをつくる
- 「私は」ではなく「われわれは」を考える
第1章:成果を上げる能力は修得できる
- 働くものを取り巻く組織の現実
- 成果をあげる能力は修得できるか
第2章:汝の時間を知れ
- 時間は普遍的な制約条件
- 時間浪費の原因を整理する
- 自由になる時間をまとめる
第3章:どのような貢献ができるか
- 専門家に成果を上げさせるには
- 人間関係のあるべき姿
第4章:人の強みを生かす
- 強みによる人事
第5章:最も重要なことに集中せよ
- 一つのことに集中せよ
- 過去を計画的に廃棄する
第6章:意思決定とは何か
- 意思決定の要因
第7章:成果を上げる意思決定とは
- 意思決定とコンピュータ
終章:成果を上げる能力を修得せよ
- 成果を上げることは使命
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本書の中では、特に時間の使い方について(第2章)が、
もっとも面白いと思いました。
とはいえ、何度も述べているように、
もっと軽いタッチで描かれた本はたくさんありますから、
無理に本書で読む必要はないかもしれません。
たとえば、安宅和人著「イシューからはじめよ」あたりを読めば、
時間の使い方について、同じことが、いやもっと具体的なことが、
書かれているようにも思います。
そういう意味では、ドラッカーの時代から、
さまざまな進歩を経てきた私たちの時代は、
恵まれた世代だと、言えるかもしれません。