小島寛之著「数学的推論が世界を変える」を読みました。
本書は、
- 経済学者であり、数学入門書を書いてきた著者が、
- 述語論理などの数学的推論を解説することで
- 金融市場で起こっている自動売買の戦いを解き明かす本です。
筆者自身がまえがき(p11)に書いているように、
本書を読むことで何がえられるのだろうか。最もあざとく言うなら、「数学を使って金融市場で儲ける」方法論が理解できるかもしれない、ということだ。(中略)ただし、(中略)本書だけでは足りないだろう。
アルゴリズムによる自動売買を考えているひとにとっては、
最初の一歩として読むには良い本かもしれません。
ただし、本書の出版は2012年であり、
人工知能などについては情報がかなり古い感じです。
人口知能や、機械学習については、ここ数年で技術が飛躍的に向上していますから、
本書に書かれた内容を、いまも同じように信じるのは、ちょっと危険かもしれません。
とはいえ、数学的推論の解説部分は、古びることはありませんから、
今もかわらず役に立つと思いました。
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さて、目次から抜粋して、おもしろかったところをまとめておきます。
第一章 数学でマネーを稼ぐ人たち
- ブラックジャックの必勝法を見つけた男
- クオンツの投機戦略
- アルゴトレーディングが引き起こす金融クラッシュ
- 金融・ゲーム・コンピューター
第二章 数学的推論とは何か
- 命題論理とは何だろう
- 数理リン路額を完成したヒルベルトの偉業
- 論理を「使い方」から理解する
第三章 コンピューターにできること・できないこと
- 数理論理学がコンピューターを発明した
- チューリングマシン
- 人間にできてコンピューターにできないこと
- ハイデガーは、「人間」をこう規定した
- コンピューターの限界は金融市場に何をもたらすか
第四章 「正しい」とはどういうことか
- 数学で証明されたことはいつも正しいのか
- 可能世界とはどういう世界か
- 論理式の真理値
- 健全性定理とは何か
- 述語論理の推論規則と健全性定理
- 完全性定理とは何か
第五章 「知っていること」を知っている
- ゲーム理論の誕生
- 背後には多層的な推論
- オーマンは可能世界を使って知識階層を表した
- ルービンシュタインのマシンゲーム
第六章 なぜリスクを根絶できないのか
- ゲーデルの不完全性定理
- 根絶できない「不可能性」
- 根絶できない金融リスク
第七章 金融バトルを解きあかす
- 新種の経済危機
- ソロスの哲学
- 共有知識と可能世界
- 様相論理とはどんな論理か
- クリプキによる意味論
- 確率的クリプキモデル
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最近だと、自動売買も個人レベルで使えるソフトがあったりしますが、
そもそもの理屈が分かっていなければ、戦いになりません。
その理屈の部分の入門書的な位置づけとして、
本書は役に立つのではないかと思いました。
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