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結城浩著「暗号技術入門 第3版」を読みました。
本書は、
- 「数学ガール」などの作者として有名な著者が、
- 暗号技術や、それを利用した認証やセキュリティについて、
- その理屈と全体像を、バランスよく教えてくれる本です。
本書の最終章には、ビットコインの仕組みについても触れられているので、
どんな技術が仮想通貨(暗号資産ともいわれます)に使われているのか、
知るには良いと思います。
※とはいえ、背景にある技術がすごいからといって、
仮想通貨を使ったギャンブルがすごいとは限りません。
この点は要注意です。
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目次から抜粋して、本書の内容をざっくりまとめます。
第I部 暗号
第1章 暗号の世界ひとめぐり
- 対称暗号と公開鍵暗号
- 暗号とセキュリティの常識
第2章 歴史上の暗号
- シーザー暗号
- 単一換字暗号
- エニグマ
第3章 対称暗号(共通鍵暗号)
- 使い捨てパッド
- DES
- トリプルDES
- AESの選定プロセス
- Rijndael
第4章 ブロック暗号のモード
第5章 公開鍵暗号
- 鍵配送問題
- RSA
第6章 ハイブリッド暗号システム
- 強いハイブリッド暗号システムとは
第II部 認証
第7章 一方向ハッシュ関数
- 一方向ハッシュ関数の応用例
- Keccak
第8章 メッセージ認証コード
- メッセージ認証コードの利用例
- HMACの詳細
第9章 デジタル署名
- デジタル署名の方法
- RSAによるデジタル署名
第10章 証明書
- 証明書を作ってみよう
- 公開鍵基盤(PKI)
第III部 鍵・乱数・応用技術
第11章 鍵
- さまざまな鍵
- 鍵を管理する
- Deffie-Hellman鍵交換
- パスワードを元にした暗号(RBE)
第12章 乱数
- 疑似乱数生成器
第13章 PGP
- デジタル署名の作成と検証
- 信頼の網
第14章 SSL/TLS
- SSL/TLSを使った通信
第15章 暗号技術と現実社会
- 仮想通貨ビットコイン
- 暗号技術が完全になっても、人間は不完全
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著者は、数学ガールを書いたひとなので、かなり分かりやすいです。
アナログ時計の文字盤を使って、mod(商の余り)が解説されたりします。
しかし、最終的な到達点は、暗号技術の複合(信頼の網)の説明なので、
そこに至る技術ひとつひとつの、メリットとデメリットを
きれいに説明してくれます。
特に、セキュリティについての章は、
ネット銀行やネット証券のパスワードを、もう一度見直さないとヤバい、
と思わせるような内容になっていたので、
暗号技術そのものに興味がなくても、
読んでいてためになるのではないでしょうか。
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本書(p15)によれば、
- 秘密の暗号アルゴリズムを使うな
- 弱い暗号は暗号化しないよりも危険である
- どんな暗号もいつかは解読される
- 暗号はセキュリティのほんの一部である
ということが語られます。
読む前には、何のことだか分からないかもしれません。
しかし、本書を読み終えるころには、
確かにその通りだ!!
と納得できるでしょう。
それくらい、一般常識と、暗号技術の常識がかけ離れています。
インターネットは、もはや生活に不可欠なものになっていますから、
安全に利用するため、最小限の理解はしておいた方が良いと思いました。
そのセキュリティに関する入門書としては、
本書は最適ではないかと思います。
ぜひ読んでみてください。
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