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アダム・オルター著「僕らはそれに抵抗できない」を読みました。
本書は、
- マーケティングの研究者である著者が、
- 顧客を依存症ビジネスにはめるテクニックを紹介し、
- 自分がはめられそうになったときのための自衛策をまとめた本です。
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依存症については先日、中高生向けの本を読みました。
そちらにも書きましたが、依存症には、
- 薬物などの、モノへの依存だけではなく、
- 行動への依存もあります。
本書で取り扱っているのは、後者の行動への依存(=行動嗜癖しへき)についてです。
行動嗜癖に落としこもうとするビジネスを依存症ビジネスと呼び、
そのようなビジネス利用者へ、警鐘を鳴らす本になっています。
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自分がさばく商品でハイになるなーー。彼らはまるで、薬物売人の鉄則を守っているかのようだ。
(ii)
という本書のプロローグは、印象的です。
ここで具体例に挙げられているのは、スティーブ・ジョブズです。
彼は、自社の iPad を絶賛する一方で、
それを自分の子供たちには使わせなかったそうです。
iPad が薬物、ジョブズが売人、の比喩になっているということですね。
本書には、iPad だけでなく、
ウェブコンテンツやゲームなど、
利用者を依存させようとする製品が、たくさん出てきます。
そして、それらのつくり手の多くは、
(任天堂の宮本茂など、一部の例外を除いて)
自分の製品に対して、距離を置いていることが示されています。
つまり、自分の作った製品に対して、
それにハマらないように気をつけているということです。
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本書の構成は、以下のようになっています。
- 第1部が、依存症の定義
- 第2部が、利用者を依存症に引き込むためのテクニック
- 第3部が、依存症になってしまった場合の解決策
この中では、第2部がいちばんおもしろく、しかも内容も多いので、
以下その部分を目次から抜粋しておきます。
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第2部 新しい依存症が人を操る 6つのテクニック
第4章 <1> 目標
- マラソンタイムの奇妙な偏り
- 現代の生活を支配する「目標」という呪い
- メールチェックせずにいられない
- 足が痛くても、出産直前でも、走るのを辞められない
- 目標追求があなたを「慢性的な敗北状態」にする
- 成功しても失敗しても、出口がない
第5章 <2> フィードバック
- ボタンがあれば、押さずにはいられないのはなぜ?
- 「いいね!」ボタンにかけられた魔法の秘密
- 「スロットマシンは電子コカインだ」
- 「キャンディークラッシュ」をやみつきにする「ジュース」とは?
- 現実世界とゲームの世界を一体化する手法「マッピング」
- 見たいものしか見られない人間、そこにつけこむ “胴元”
第6章 <3> 進歩の実感
- 任天堂のレジェンド宮本茂が「マリオ」を生み出すまで
- 20ドル紙幣をそれ以上で落札するなんて
- 「あと1回、あと1回・・・」
- のめりこませる “デザイン” だって、データ分析があればお手のもの
- 仕組まれた「ビギナーズラック」に気をつけろ
- 「単純でばかばかしい」ゲームほど心をわしづかみにする
- スマホが、老若男女を問わずゲーム依存症にする
第7章 <4> 難易度のエスカレート
- 退屈するぐらいなら電気ショックを選ぶ?
- 行動嗜癖がまとう創造や進歩という名の「マント」
- テトリスに人がハマる学問的説明
- フローに入るために必要な2つの要素とは
- 「あとちょっと」は成功への道しるべなのか、依存への最短ルートなのか
- オフィスレスが長時間労働と過労死を招く
第8章 <5> クリフハンガー
- なぜあるメロディが頭から離れなくなるのか
- 「史上最悪のラストシーン」が10年以上視聴者の心を奪う理由
- 平凡な日常にささやかなスリルを
- ネット動画「自動再生」の功罪
- ネットフリックスが生んだ「ビンジ・ウォッチング」という新しい依存症
第9章 <6> 社会的相互作用(ソーシャル・インタラクション)
- インスタが刺激する「他人と比較したい欲求」
- 他人からどう見られているのか気になって仕方ない
- インスタで「いいね!」中毒に陥った10代モデルの告白
- 異性の格付けサイトがかくも依存症の高い理由
- ゲームに「友情」が持ち込まれるとき
- 「ピクルスになった脳は、二度とキュウリに戻りません」
- 人を依存症にするゲームが持つ3つの特徴
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本書は、twitter や5ch、ネットサーフィンなどがやめられないという方には、
ぜひ読んでほしい本だと思いました。
あなたを依存症に引きずり込むビジネスは、いっぱいあります。
それらへの防衛策として、読んでおいて損は無いと思います。