※かじとじむ(当サイト)は、ふだんはネット情報のまとめサイトですが、ときどき管理人が読んだ本をまとめています。読書タグや、ざっくりまとめタグからどうぞ!
ロバート・H・ラスティグ著「果糖中毒」を読みました。
原題は、「Fat Chance – Beating the Odds Against Suger, Processed Food, Obesity and Disease」です。
本書は、
- 小児科医でもある著者が、
- 不健康な肥満になる生化学的な理由を解説し、
- 具体的対策(食物繊維を食べて、運動する)をお勧めする本です。
なお、以下の筆者のyoutubeが世界的にバズってるようです。
https://www.youtube.com/watch?v=dBnniua6-oM
===
日本語タイトルの通り、筆者は「糖分こそが悪である!」と主張します。
本書の冒頭で、
糖分は私たちをゆっくりと死に至らしめている。そのことについて、これから証明していこう。
(p7)とある通り、糖分がどうして悪いのか、生化学(体内の化学反応)から証明されていきます。
===
本書では、以下のことが、何度も繰り返し強調されます。
- 現代社会は、全世界的に(動物も含めて)太りやすくなっている。
- 太りやすさは、個人の意志力だけでどうにかできるものではない。
- 食べ物の量よりも質に気をつけないといけない(カロリー総量制限は意味ない)。
なぜそう言えるのか?
本書では、政治的、社会的な状況から、細胞内の化学反応まで、
横断的にその理由を探っていくことになります。
===
本書の著者は医師なので、生化学の部分がいちばん詳しいです。
詳しいところは本書を読んでいただくとして、
ざっくり言うと、次の2つのホルモンが影響しています。
- レプチン と、
- インスリン です。
そして、これらのホルモンが、
- 円滑に動くと => 健康になる
- 抵抗があると => 不健康な肥満になる
という関係性があります。
===
なお、不健康な肥満とは何かというと、
- 内臓脂肪をたくさん貯め込んでしまい、
- 糖尿病などの病気になって、
- 最悪の場合、早死にしかねないこと
を指します。
そもそも脂肪には、
- 皮下脂肪 と、
- 内臓脂肪 があって、
このうち、内臓脂肪(お腹、特に肝臓に蓄積される脂肪)が、本書では問題とされています。
よって、お腹周りを測ってみて、
お尻周りの長さより明らかに大きい方は、要注意です。
(いわゆる、メタボリック・シンドロームの状態です)
また本書は、皮下脂肪の痩せ方を教えてくれる本ではありません。
なので、本書の内容を実践しても、見た目が痩せた体にはなりません。
- 太ももの、むっちり、
- 二の腕の、ぷるぷる、
- 二重あごの、たぷたぷ、
いずれも皮下脂肪であり、これらの脂肪があることは、
本書ではむしろ健康であるとされています。
大事なことなので再度書きますが、
主要な読者は、「不健康に太りたくない」方です。
この点は注意してください。
===
ここまでを、まとめると、
- 不健康な肥満になると、病気になりやすくなる。
- 不健康な肥満とは、内臓脂肪が多い状態。(皮下脂肪は関係ない)
- 内臓脂肪が多いのは、インスリンなどのホルモンの動きが抑制されているから。
ということです。
ではどうして、インスリンなどのホルモンが抑制されてしまうのか。
詳しい理屈は、本書を読んでいただきたいのですが、結論だけ言うと、
- 白い炭水化物を食べる
- 肝臓が不調になる
- ストレスホルモンが上昇する
(p188-9)といった原因があるようです。
===
では、具体的には、どうすればよいのか。
上記の1と3は分かりやすいでしょう。
白い炭水化物を避け、ストレス発散が必要です。
対策が分かりにくいのが、2の肝臓です。
肝臓に良くないものとして、有名なのはアルコールです。
これも本書では、不健康な肥満に良くないものとして紹介されています。
しかし同時に、アルコールと同じくらい良くないものとしてあげられているのが、
本書のタイトルにある「果糖」なのです。
第11章には、「アルコールも果糖も「同罪」」という説が展開されます。
===
肝臓に負担をかけないため、本書でおすすめされているのは、
アルコール依存、砂糖依存になることを避けて、
- 食物繊維を摂ること、
- 1日15分の運動をすること です。
お腹周りが気になる方、
健康診断でメタボリック・シンドロームだと診断された方は、
糖分を避けるのはもちろんのこと、
同時に、
食物繊維の多いものを食べるようにして、
少しでも運動を始めてみるのが良いかもしれません。
(まあ、それが難しいんですけどね)
===
以上、本書の中心的なところを、
かいつまんで紹介しました。
しかし、本書は内容の濃い本です。
もっといろいろな情報であふれています。
たとえば、本書の原題に「プロセスフード」とあるように、
ファーストフード批判の章もあります。
また、低糖質ダイエットの可否や、ヴィーガン食の落とし穴など、
さまざまな健康法が比較されているところもあります。
社会がどうしてこれほど砂糖を供給するようになったのか、
政治的、マーケティング的な背景も解説されます。
そして、最後の第V部では、
316種類もの食品リストが掲載され、
ホルモン環境を正常化するための習慣も提案されています。
不健康な肥満になりたくない、もしくは今なっていてどうにか脱したい、という方は、
ぜひ本書を通読してみてください。
きっと、これまでに知らなかった知識がザクザク手に入るのではないかと思います。