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伊藤俊一著「荘園」を読みました。
本書は、
- 公家などの私有農園である「荘園」について、
- その発生から制度崩壊までを歴史的に解説し、
- 荘園の歴史的意義を考察する本です。
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本書は、歴史書を読みなれていないひとにも、分かりやすく解説されています。
年号は西暦表示だし、
場所も旧国名(越後とか備前とか)だけでなく、現所在地表記で書かれています。
古地図やグラフもあり、イメージがしやすくなっています。
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「荘園」というと、なんだか難しいような気もしますが、
今風に言えば、「起業」なんだと思いました。
新しい土地を開墾し、そこで事業(農業)を始める。
その事業を買収、売却したり、寄付したりすることもある。
いまでいうM&Aみたいなものでしょうか。
それらが、国家(朝廷)権力の介入を受けずに行われます。
つまり、中央集権国家の反対側にあるものです。
ある意味では、小さな政府志向で、リバタリアン的です。
もちろん、本書にはそのような記述はありませんし、
そもそも中世の日本にそのような概念はないのですが。
しかし、歴史の中に、このような解釈を読むのは面白いと思いました。
似たような面白がり方の本としては、井沢元彦さんの「お金の日本史」があるかもしれません。
本書は、井沢さんの本よりも歴史学寄りな本だと思います。
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本書は、だいたい700年ぐらいから、1450年ぐらいまでの日本で、
荘園制度がどのような変遷をたどったか、を描きます。
政治制度としての変遷も、もちろん書かれていますし、
同時に、事業の好況・不況が、(農業なので)気候の変動を大きく受け、
それらが荘園制度にどのように影響されているかも描かれます。
政治と実業のあいだで揺れ動く荘園制度は、
なんだか、現代的な問題のようにも読めます。
大変面白かったので、ぜひ読んでみてください。