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長谷川和夫、猪熊律子著「ボクはやっと認知症のことがわかった」を読みました。
本書は、
- 認知症の検査に使われる「長谷川式スケール」の開発者である著者が、
- 80歳を過ぎて自身も認知症になり、
- 認知症になってみて考えたことと、自身の半生を語る本です。
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著者は認知症(アルツハイマー型ではなく、嗜銀顆粒性認知症)ではありますが、
1日ずっと「恍惚の人」状態というわけではありません。
朝は比較的意識がはっきりしており、午後になると、だんだん分からなくなるようです。
しかし、それも含めて、過去から連続した自分であるということが語られます。
つまり、認知症前・後で、まったく別人になるわけではなく、
認知症前からの人生が、認知症後まで続いていくわけです。
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本書でいちばん大事にするべきことは、
認知症になっても、生まれてから昨日までの自分は残る
ということだと思いました。
だから、その人の尊厳は守られないといけない。
認知症になったら、急に物体になるというわけではないということです。
とはいえ、相手は混乱していますから、
こちらの意図通りには動かないものでしょう。
介護をする側の負担は、大変大きなものになると分かりました。
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本書では、日本の認知症政策についても若干触れられています。
デイサービスを利用した感想なども書かれており、
いろいろ言われているものの、日本の介護事業は良いものなんだなと思いました。
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とはいえ、著者は医大の理事長をやった人であり、
上皇、上皇后に認知症センターの説明をするようなお医者さんでしたから、
お金には困っていないと思います。
免許を返納して、タクシー移動ができますし、
10歳年下の奥さんや、娘さんらが面倒を見てくれます。
いわゆる、独居老人が認知症になった場合に、
同じような待遇にいられるかはよく分かりませんでした。
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しかしすべてを国の政策に負担させるのは、
税金がいくらあっても足りませんから、それはそれで問題です。
難しいバランスの上になりたっているのでしょう。
わたし自身も、病気や事故がなければ、いつかは高齢者になり、
さらに認知症になる可能性は大いにあります。
長生きすることも、ある意味では不安なことだと思いました。
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本書は、認知症患者に対するイメージが大きく変わる本ではないかと思います。
身近なひとが認知症になったとき、どのように接すれば良いのか、
いまのうちから、ぜひ読んでいただければと思います。