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伊東光晴著「ガルブレイス」を読みました。
本書は、
- 京都大学名誉教授で理論経済学者の著者が、
- アメリカの経済学者であるガルブレイスについて
- その生い立ちと主著をまとめた本です。
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ガルブレイスは、簡単に言えば、新自由主義(フリードマン)のライバルです。
アメリカ政府に対して経済政策の提言を行い、著書もたくさんあります。
とくに「不確実性の時代」は、テレビとのタイアップで生まれ、ベストセラーになりました。
しかし、ノーベル経済学賞は獲っていません。
学問としての経済学の主流にはなりませんでした。
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面白かったのは、「経済学と公共目的」についてのところです。
この本は、ガルブレイスの経済学三部作の最後の1冊ですが、あまり読まれていないそうです。
しかし、筆者はこの本の重要性を指摘します。
本書には、「自己搾取」という概念が描かれます。
この「自己搾取」という言葉を理解するためには、「自己努力」という言葉をその前に挿入すればいい。農民たちは日々自己努力している。それは「勤勉」と言われる社会的努力である。だが、自己努力が強まれば自己搾取になるのである。(p159)
もちろん、社会を回していくために、自己努力は必要です。
農業だけでなく、サービス業や個人業者においても、気持ちの良いサービス、顧客に寄り添ったサービスが、円滑な経済には不可欠です。しかし。
だが、この社会にとって大切な自己努力も、度が過ぎれば自己搾取になるのである。経済状態の悪化がそれをもたらす。したがって、これらの分野への経済政策は、それを防止するためのものとして大切なのである。
くり返そう。農業分野も含め、これらの分野の経済状態の悪化には、自己搾取まで進むことを防ぐため政策介入しなければならない。これがガルブレイスの考えである。(pp.160-1)
新自由主義であれば、自己責任ですべて押し通すところかもしれません。
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ガルブレイスはノーベル経済学賞を受賞しませんでしたが、
受賞者のサムエルソンはこのように語っています。
われわれノーベル賞受賞者の著作が忘れられることがあっても、ガルブレイスの方は記憶され読まれていくことだろう。(p.36)
著者も同意見のようです。
私は、この推薦の一文は正しいと思っている。それは、多くのノーベル経済学賞(それは本来のノーベル賞とは異なり、スウェーデンの銀行がつくったものであるが、銀行の方針ゆえに福祉国家推進論者は除かれ受賞者の業績のほとんどは、歴史の中で忘れられていくものだからである。歴史に残るためには、時代を捉えたファクト・ファインディングが、創造性豊かに理論化され、しかも広く人々の共感を呼ぶ思想に支えられていなければならないが、ガルブレイスの業績は、こうした要素を持っているからである。(pp.36-7)
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現代日本もまた、アメリカ型の資本主義に近いように思います。
自己責任論が強まっている時代こそ、ガルブレイスを読み直すときなのかもしれません。