【読書】 九州に行ったらスナックに行こう

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谷口功一他著「スナック研究序説 日本の夜の公共圏」を読みました。

日本の夜の公共圏:スナック研究序説
スナック研究会
白水社
2017-06-22


本書は、

  • 東大や慶応大などの、法学・人文学系の教授たちが
  • サントリー文化財団の研究助成金を使って
  • スナックについて「手加減なしで学術的に好き放題書いた」論文集です。

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いくつか、面白かったエピソードを:

江戸時代に、「粋(いき)」とか「通(つう)」という言葉がもてはやされた。
野暮なこと言うな、みなまで言うな、細けえことは良いんだよ、の精神。

忠臣蔵が、「案内手本通人蔵」という作品に変換され、
登場人物みんな、世の中の機微に通じた「通人」。

いざこざが起こっても、柔軟かつ円滑に解決してしまうので、
作中で、何もいさかいが起こらない話らしい。

忠臣蔵と言えば、部下が上司の復讐をする話なのに、
みんな「通」だから、いさかいが起こらず、
よって復讐もなく、o平和に解決してしまうらしい。

一度読んでみたい。

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面白かったエピソード2個目:

大正時代のカフェー(スナックの先祖)では、
ウェイトレスの人気投票があった。

ビールを1本買うと投票権が1枚もらえるという
AKBで、どこかで、聞いたことがあるシステム。

文芸春秋を作った人(菊池寛)が、
あるウェイトレスに入れ込んで、ビールを150本買ったらしい。
ビールは呑み切れなかったので、持って帰らされた。

菊池のやったことに対して、
文学者から「田舎者が本性を露した」など、辛らつなコメントがつく。
なお菊池は香川県出身。

また菊池は、カフェーで美人局(つつもたせ)の被害にもあい、
そのことを別の小説家に暴露されたりした。

文春砲もびっくり。

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面白かったエピソード3つ目:

現代において、スナックの立地を分布させてみると、
軒数では九州が圧勝する。

トップ20に、九州の市や区が、7つランクインする。

  1. 福岡県 福岡市博多区
  2. 北海道 札幌市中央区
  3. 広島県 広島市中区
  4. 大阪府 大阪市北区
  5. 長崎県 長崎市
  6. 兵庫県 神戸市中央区
  7. 大阪府 大阪市中央区
  8. 愛知県 名古屋市中区
  9. 沖縄県 那覇市
  10. 熊本県 熊本市中央区
  11. 宮崎県 宮崎市
  12. 鹿児島県 鹿児島市
  13. 大分県 大分市
  14. 高知県 高知市
  15. 福岡県 北九州市小倉北区
  16. 岡山県 岡山市北区
  17. 石川県 金沢市
  18. 愛媛県 松山市
  19. 東京都 新宿区
  20. 兵庫県 姫路市

なお、福岡市博多区のスナック軒数は、838軒。

なお、人口当たりで比較すると、
1位は京都府京都市東山区で、
人口1000人当たり9.03軒。

九州に行ったらスナックに行こう。

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論文の1本1本は、それほど長くないので読みやすいと思います。

序章:スナック研究事始(谷口功一)
・どうしてこんな本ができたか、どんな風に研究会が進められたか

第1章:スナックと「物のあはれを知る」説
(高山大毅)
・荻生徂徠や本居宣長について

第2章:行政から見たスナック–夜の社交を仕切る規制の多元性
(伊藤正次)
・スナックを運営する場合の警察や保健所、建築の規制について

第3章:夜遊びの「適正化」と平成27年風営法改正
(亀井源太郎)
・深夜0時以降の夜遊びは、黙認されるべきか、適正化されるべきかについて

第4章:スナック・風適法・憲法
(宍戸常寿)
・ダンスや接待、遊興を規制することと自由について

第5章:カフェーからスナックへ
(井田太郎)
・スナックの先祖カフェーについて。

第6章:< 二次会の思想 >を求めて–「会」の時代における社交の模索
(河野有理)
・スナックでの「ママ」の役割について

第7章:スナックと「社交」の空間
(苅部直)
・スナックにもいろいろあって、社交にもいろいろある、について

第8章:スナックの立地と機能–「夜の公共圏」vs.「昼の公共圏」
(荒井紀一郎)
・スナックの都市別分布図について

補章:なぜスナックを語りたくなるか
(横浜竜也)

このほか、都築響一、谷口功一、苅部直による
「珍日本スナック紀行?」という鼎談も収録されています。

これが一番面白かったかも。

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わたしは残念ながら、
スナックらしいスナックには行ったことがありません。

本書を読んで、
「スナックにもいろいろあるから、
 実際に行ってみないことには分からない」
ということが分かりました。

共通しているのは、
お酒飲んだら、みな平等な社交場だということです。

会社で偉い地位にいるとか、貯金が1億円あるとか、
そんなの関係なくて、
お酒を飲みながら人間関係が結ばれる場ということです。

いまはコロナでなかなか難しいかもしれませんが、
感染がもう少しゆるやかになったら、
一度スナックに行ってみたいな、と思える本でした。

※ ただし、あまりに空気読めないお客さんは、
 つまはじきになるみたいなので、
 行くときは気を付けていこうと思いました。

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