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谷口功一他著「スナック研究序説 日本の夜の公共圏」を読みました。
本書は、
- 東大や慶応大などの、法学・人文学系の教授たちが
- サントリー文化財団の研究助成金を使って
- スナックについて「手加減なしで学術的に好き放題書いた」論文集です。
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いくつか、面白かったエピソードを:
江戸時代に、「粋(いき)」とか「通(つう)」という言葉がもてはやされた。
野暮なこと言うな、みなまで言うな、細けえことは良いんだよ、の精神。
忠臣蔵が、「案内手本通人蔵」という作品に変換され、
登場人物みんな、世の中の機微に通じた「通人」。
いざこざが起こっても、柔軟かつ円滑に解決してしまうので、
作中で、何もいさかいが起こらない話らしい。
忠臣蔵と言えば、部下が上司の復讐をする話なのに、
みんな「通」だから、いさかいが起こらず、
よって復讐もなく、o平和に解決してしまうらしい。
一度読んでみたい。
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面白かったエピソード2個目:
大正時代のカフェー(スナックの先祖)では、
ウェイトレスの人気投票があった。
ビールを1本買うと投票権が1枚もらえるというAKBで、どこかで、聞いたことがあるシステム。
文芸春秋を作った人(菊池寛)が、
あるウェイトレスに入れ込んで、ビールを150本買ったらしい。
ビールは呑み切れなかったので、持って帰らされた。
菊池のやったことに対して、
文学者から「田舎者が本性を露した」など、辛らつなコメントがつく。
なお菊池は香川県出身。
また菊池は、カフェーで美人局(つつもたせ)の被害にもあい、
そのことを別の小説家に暴露されたりした。
文春砲もびっくり。
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面白かったエピソード3つ目:
現代において、スナックの立地を分布させてみると、
軒数では九州が圧勝する。
トップ20に、九州の市や区が、7つランクインする。
- 福岡県 福岡市博多区
- 北海道 札幌市中央区
- 広島県 広島市中区
- 大阪府 大阪市北区
- 長崎県 長崎市
- 兵庫県 神戸市中央区
- 大阪府 大阪市中央区
- 愛知県 名古屋市中区
- 沖縄県 那覇市
- 熊本県 熊本市中央区
- 宮崎県 宮崎市
- 鹿児島県 鹿児島市
- 大分県 大分市
- 高知県 高知市
- 福岡県 北九州市小倉北区
- 岡山県 岡山市北区
- 石川県 金沢市
- 愛媛県 松山市
- 東京都 新宿区
- 兵庫県 姫路市
なお、福岡市博多区のスナック軒数は、838軒。
なお、人口当たりで比較すると、
1位は京都府京都市東山区で、
人口1000人当たり9.03軒。
九州に行ったらスナックに行こう。
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論文の1本1本は、それほど長くないので読みやすいと思います。
序章:スナック研究事始(谷口功一)
・どうしてこんな本ができたか、どんな風に研究会が進められたか
第1章:スナックと「物のあはれを知る」説
(高山大毅)
・荻生徂徠や本居宣長について
第2章:行政から見たスナック–夜の社交を仕切る規制の多元性
(伊藤正次)
・スナックを運営する場合の警察や保健所、建築の規制について
第3章:夜遊びの「適正化」と平成27年風営法改正
(亀井源太郎)
・深夜0時以降の夜遊びは、黙認されるべきか、適正化されるべきかについて
第4章:スナック・風適法・憲法
(宍戸常寿)
・ダンスや接待、遊興を規制することと自由について
第5章:カフェーからスナックへ
(井田太郎)
・スナックの先祖カフェーについて。
第6章:< 二次会の思想 >を求めて–「会」の時代における社交の模索
(河野有理)
・スナックでの「ママ」の役割について
第7章:スナックと「社交」の空間
(苅部直)
・スナックにもいろいろあって、社交にもいろいろある、について
第8章:スナックの立地と機能–「夜の公共圏」vs.「昼の公共圏」
(荒井紀一郎)
・スナックの都市別分布図について
補章:なぜスナックを語りたくなるか
(横浜竜也)
このほか、都築響一、谷口功一、苅部直による
「珍日本スナック紀行?」という鼎談も収録されています。
これが一番面白かったかも。
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わたしは残念ながら、
スナックらしいスナックには行ったことがありません。
本書を読んで、
「スナックにもいろいろあるから、
実際に行ってみないことには分からない」
ということが分かりました。
共通しているのは、
お酒飲んだら、みな平等な社交場だということです。
会社で偉い地位にいるとか、貯金が1億円あるとか、
そんなの関係なくて、
お酒を飲みながら人間関係が結ばれる場ということです。
いまはコロナでなかなか難しいかもしれませんが、
感染がもう少しゆるやかになったら、
一度スナックに行ってみたいな、と思える本でした。
※ ただし、あまりに空気読めないお客さんは、
つまはじきになるみたいなので、
行くときは気を付けていこうと思いました。
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