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須藤昌寛著「福祉現場で役立つ動機づけ面接入門」を読みました。
本書は、
- 国際医療福祉大学の教授である著者が、
- 「動機づけ面接」について、分かりやすく教えてくれる本です。
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タイトルに「福祉現場で」とある通り、
本書で取り上げられている事例は、児童福祉や高齢者福祉の具体例です。
たとえば、
- 子どもを特別支援のクラスに入れるかどうかとか、
- デイサービスを利用するかどうかとか、
そういった例です。
しかし、動機づけ面接そのものは、福祉だけでなく、
営業など、幅広い仕事に応用できそうだと思いました。
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そもそも、動機づけ面接とは何でしょうか。
あんまりなじみのない言葉だと思います。
わたしも、以前何かのビジネス書で読んでいて、たまたま知りました。
想像しやすいのは、たばこ中毒の患者と、その医者の会話です。
医者は、たばこを辞めさせたいと思っています。
一方、患者は、たばこを辞めた方が良いと思ってはいるけど、辞められない状態です。
このとき、医者が
「たばこは、今すぐ、一切やめなさい、辞めないやつはバカだ」
などと言ってきたら、患者は医者を信頼しないでしょう。
結果的に、患者はたばこを辞められないまま、となってしまいます。
患者の健康は害され、医者にとっても失敗ということになります。
じゃあ、医者は患者に、どう伝えれば良かったのか?
患者が、医者の提案を聞きやすくなるようにするために、
医者がどんな話し方をすれば良いのか。
その方法論が、「動機づけ面接」です。
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「動機づけ面接」は、現在では、医者と患者の関係だけでなく、
さまざまな場面で応用されているようです。
その応用例のひとつが、本書の福祉現場でしょうし、
そのほか、営業や商談でも使えそうです。
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動機づけ面接の具体的なテクニックや心構えは、本書を読んでいただくとして、
ここでは、最初の失敗例を引用しておきます。(pp.3-4)
以下は、吉田さんという高齢者と、
ケアマネージャー(福祉サービスを勧めるひと)の会話です。
ケアマネージャーは、吉田さんの娘からの依頼で、
吉田さんに福祉サービスを使ってほしいと考えています。
- ケ:「吉田さん、最近の調子はどうですか?」
- 吉:「まあまあだよ。特に悪いこともないかな」
- ケ:「買い物とか掃除なんかはどうですか。一人暮らしで大変でしょう」
- 吉:「メシはコンビニで買ってるし、掃除はあまりしていないけど大丈夫だよ」
- ケ:「コンビニのお弁当ですか? 栄養の偏りが心配ですね」
- 吉:「歳をとると食欲がなくなるんだ」
- ケ:「掃除だってときどきはしたほうがよいですよ。モノが散らかっていると転倒の危険もありますし。転倒して骨折したらまた入院ですよ」
- 吉:「大丈夫だよ。自分でも気をつけているし」
- ケ:「どんなふうに気をつけていらっしゃるんですか?」
- 吉:「・・・」
- ケ:「娘さんも心配されていらっしゃいますよ。このまま一人で暮らしていると何が起こるか分かりませんし。どうですか、デイサービスやホームヘルパーとか、福祉サービスを利用してみませんか?」
- 吉:「・・・」
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これを見ても分かるとおり、相手を「論破」するような会話では、
やった方が良いことでも、それをうながすことが難しくなります。
特に、ネット上の会話は、この種の「論破」が多い気がします。
しかし、「相手の間違い」を「わたしが正す」というのは、
必ずしも良い結果を生みません。
本書でも、「間違い指摘反射」と呼ばれ、避けるべき対応とされています。
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動機づけ面接という手法においては、
相手が「両価性」という状態にあると仮定します。
漢字で書くと難しく感じますが、
簡単に言えば「わかっちゃいるけどやめられない」という状態です。
- お酒辞めないといけないのに、やめられない。
- 勉強したほうがいいのに、始められない。
- ダイエットしたいのに、続かない。
- 片づけしたいのに、ほったらかし。
ぜんぶ、両価性です。
英語で言えば、アンビバレンス(Ambivalence)です。
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動機づけ面接は、
かつて流行した、黒い心理学や、メンタリズムのように、
相手を、こちらの思い通りに誘導するような、テクニックではありません。
しかし、相手を上手に誘導し、相手にとって最良の選択肢を選ばせるというのは、
仕事上、多くの場面で遭遇することだと思います。
本書は、具体例としては福祉現場しか掲載されていませんが、
このテクニックをビジネスに応用するのは、決して難しくないと思います。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
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