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菅原晃著「高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学」を読みました。
本書は、
- 北海道の高校教師である著者が、
- 大学の経済学への橋渡しをしてくれる本です。
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内容としては、
- 第1章で、GDP三面等価、
- 第2、3章で、貿易収支(貿易黒字、赤字)、
- 第4章で、リカードの「比較優位論」、
- 第5章で、国債、
- 第6章で、財政政策と金融政策
について、それぞれ書かれています。
この中で、第4章が特に面白かったので、
今回はここをまとめたいと思います。
なお、掛け算と足し算だけですが、以下数学を使います。
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本書の事例では、国際貿易が対象となっていますが、
社内分業でも成り立つので、
以下、佐藤さんと鈴木さんの話として書きます。
- 佐藤さんはベテランの先輩、仕事ができる。
- 鈴木さんは新卒社員、仕事ができない。
という設定です。
この会社では、ぬいぐるみを製造していて、
佐藤さんと鈴木さんは、
- ピカチューのぬいぐるみと、
- コナンのぬいぐるみを作っています。
佐藤さんは、ベテランなので、
1時間に、ピカチューなら4匹、コナンなら3人作れます。
鈴木さんは、佐藤さんより遅いですが、
1時間に、ピカチューなら2匹、コナンなら1人作れます。
なんだか、算数の文章問題みたいになってきましたが、ここまでが、前提です。
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鈴木さんも、佐藤さんも、1日8時間働くとして、
4時間ずつ、ピカチューとコナンを作るとします。
ピカチューは、
2 * 4 (鈴木) + 4 * 4 (佐藤) = 24
コナンは、
1 * 4 (鈴木) + 3 * 4 (佐藤) = 16
作れることが分かります。
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ここで、バランスを変えます。
鈴木さんは、佐藤さんと比べて、
ピカチューもコナンも生産性は低いのですが、
比較的ピカチューの方が、生産性が高いので、
こちらに、自分の持ち時間(8時間)を、全振りします。
そして、佐藤さんは、その分、コナンづくりを優先します。
すると・・・、
ピカチューは、
2 * 8 (鈴木) + 4 * 2 (佐藤) = 24
コナンは、
1 * 0 (鈴木) + 3 * 6 (佐藤) = 18
ピカチュー24匹は変わらないのに、
コナンは16人から18人に増えました。
ふたりとも、残業が増えたのではなく、
同じ8時間しか働いていません。
ただ、佐藤さん、鈴木さんが協力して、
生産のバランスを調整しただけで、
生産性が上がったわけです。
これが比較優位です。
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国際的な貿易においては、
これと同じことが起こるそうです。
ただし、いくつかの前提があります。
詳しくは、本書を読んでいただきたいのですが、ざっくりいうと、以下の2点です。
- 増産したら、増産しただけ需要が伸びること
- 生産調整が、簡単にできること
1つ目は、実際の需要には限界があって、
どんなにおいしいケーキでも、
たくさん食べればいつかは飽きてしまうわけです。
ぬいぐるみだって、みんなが1個ずつ買ってくれれば、
いつかは、もういらないと言われてしまいます。
そうなったときどうするかは、リカードの比較優位では説明できません。
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2つ目の前提は、もう少し深刻です。
上記の例では、佐藤さんと鈴木さんが、1人の人間だったから良かったのですが、
実際の貿易では、たとえば、石炭産業に人生をかけていたひとたちが、
いきなり石炭産業を海外に奪われることになるわけです。
すると、多くの失業者が出てきます。
いままで石炭産業だけをやってきた、40代、50代のおじさんたちが、
いまさら、IT産業でバリバリ働くわけにはいかないわけです。
理想的なことを言えば、生産調整がどんどん進むことで、
社会全体は豊かになっていくわけですが、
しかし細かく見ていくと、その調整によって、個々の人間たちは、
失業したり、人生を見失ったりしかねないわけです。
これもまた、リカードの比較優位では解決できない話です。
しかし、このようないくつかの前提を受け入れれば、
生産性の向上が、簡単な掛け算、足し算だけで理解できるので、
なかなか強力な理論だと思いました。
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今回は、特にリカードの部分が面白かったのでまとめましたが、
他にも、貿易収支の見方や、国債の見方について、
「へぇ~」と思うところが多くありました。
ただし、著者の書き方は、
自分の知識と相容れない新聞記事などに対して、やや辛辣なので、
もしかすると、一部の読者を遠ざけるかもしれません。
この気質は、本書の解説を書いている山形浩生さんにちょっと似ています。
自分の主要な読者にだけ通じれば良いというスタンスなのかもしれません。
とはいえ、内容としては面白かったので、
ぜひ読んでみていただければと思います。