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あけましておめでとうございます。
新年1冊目は、
野矢茂樹著「まったくゼロからの論理学」を読みました。
本書は、
- もと東大教授で哲学者の著者が、
- 立正大学の学生に対しておこなった授業をもとに、
- 論理学の基礎を、まったくのゼロから説明してくれる本です。
野矢さんの本は、これまでも何冊か読んできましたが、
本書がいちばん、たぶん抜群に分かりやすいです。
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これまでの本(たとえば、「論理トレーニング101題」など)も、
おもしろかったし、分かりやすかったのですが、
今にして思えば、
しょせん(?)東大生に教える前提で書かれていました。
しかし本書は、立正大学文学部(偏差値55)という、
東大生に比べればだいぶ「ふつう」の学生を相手に書かれています。
なので、「ふつうの人」がつまづきやすいポイントが、
事前に、ことごとく、フォローされていくのです。
(つまづいてくれた立正大生にグッジョブ!)
著者じしんも、「はじめに」で、
「これなら分かる」と言ってもらいたい。
(中略)
「全員に分からせようとする気持ちが伝わる本だった」という感想が読者から聞けるならば、これ以上の喜びはありません。
と書くぐらいなので、
分かりやすい本が書けた! という自負があるのでしょう。
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分かりやすさの例として、
たとえば、本書のp75から、問題16を抜粋してみます。
ある体育祭について、「すべての学生がどれかの競技に参加した」という発言の否定となる発言を選びなさい。
- ある学生はどの競技にも参加しなかった。
- どの競技にも参加しなかった学生はいない。
- すべての競技に参加した学生はいない。
- すべての学生がどの競技にも参加しなかった。
この問題の解説部分の一部は、こんな感じです。
「全員どれかの競技に参加したんでしょう?」
「いや、そうでもないんだ」
「どの競技にも参加しなかった学生がいたの?」
「うん。いたね」
この問題はもともと、全称と存在のドモルガンの法則を知るための練習問題ですが、
ぜんぜん知らなくても、なんとなく納得できるのではないでしょうか。
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ところで、論理学なんて、何かの役に立つのでしょうか。
一般的には、就職試験などのときの
論理的思考力の問題などで役に立つような気がします。
また、
わたしは昨年から、プログラミングを趣味程度にやっているので、
命題論理の部分は、とてもためになりました。
そもそも、JavaScriptのようなプログラミング言語は、
二値論理を扱います。
つまり、true か、false か、どちらかです。
trueと、falseで組み立てられた論理が、
常に正しくなるかどうかは、
プログラムが動くかどうかについてかなり重要でしょう。
p127の例42では、
((P∨Q)∧R)⊃P
という命題が扱われていますが、これは、
Pがfalse、QとRがtrueのとき、全体としてfalseになります。
具体的に書けば、
const P = false,
Q = true,
R = true;
console.log( ((P || Q) && R) ? P : ture );
で、falseが返ってきます。
こういった場合分けを記号的に整理できれば、
強いだろうなと思いました。
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本書ではこのほかにも、
「演繹は、帰納の単純な対概念ではない」という指摘があって、
言われてみれば確かにそうかも、と思いました。
そもそも、帰納法と演繹法は同時に学ぶので、
なんとなく対にして覚えていましたが、
よくよく考えてみると、必ずしも一方が他方の反対を述べているとは限りません。
いろいろと勉強になる本なので、
そして抜群に分かりやすい本なので、
ぜひ読んでみてください。