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松本俊彦著「世界一やさしい依存症入門」を読みました。
本書は、
- 依存症治療に携わる精神科医である著者が、
- 主に中高生や、その保護者、教師向けに、
- 依存症の種類と問題、そしてその背景を解説する本です。
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中高生の依存症問題についての本ですが、
大人が読んでも、十分に面白い(というか、衝撃的)な内容です。
薬物依存症というと、
- 「覚せい剤止めますか、人間やめますか」とか、
- 「ダメ。ぜったい。」
というイメージが強くて、
「規制されるべきもの」であり、
逆に言えば、「規制さえできれば、安心」という感覚があります。
もちろん、違法な薬物は規制はされないといけませんが、
それだけではこぼれ落ちるものがある、というのが著者の主張です。
もう少し踏み込んで言えば、
「規制されるべきもの」→「だから規制を破った人は、二度と社会になじめない」
まで行ってしまうと、ダメなわけです。
規制だけではこぼれ落ちるものとは、依存症克服後の、彼らの人生です。
とくに、若年層で依存症になった子たちを、いかにして社会に戻すのか、
これは、精神科医である著者だからこそ発信しうる、大きな問題です。
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本書での最初の事例は、薬物依存です。
しかし、ここで出てくるのは、大麻や覚せい剤ではありません。
エナジードリンクや、市販薬など、日常で手に入る薬物です。
日常的に手に入るものでも、いったん依存してしまうと、
1日に何十錠も飲んでしまうことになります。
そしてさらに悪いことに、自分の意思では辞められなくなります。
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なぜ一部のひとは、依存してしまうのか。
逆に言えば、
その他のひとは、なぜ依存まではいかないのか。
著者は、患者の背後にある人間関係や、社会性に着目して、
これらの問いを解き明かしていきます。
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本書で扱われる依存症は、
- カフェイン
- 市販薬
- 大麻
- アルコール
- タバコ
といった、モノへの依存だけでなく、
- ゲーム
- 過食や拒食
- リストカット
といった、行為への依存も扱われます。
著者自身も、たばこは吸うし、ゲームに依存した経験もあります。
社会生活が多面化した現代では、さまざまなものが依存の対象になります。
というか、いまこの文章を読んでいるであろう、そのスマホやPCが、
そもそも依存症の対象になりえます。
寝る前に、スマホを手放せないというひとも多いのではないでしょうか。
依存症は、誰にとっても、けっして珍しくない症状と言えそうです。
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本書には、
リストカットがやめられない患者に対して、
「自傷日誌」というものを使って
原因を探し出そうとする部分があります。
わたしは手帳術やノート術が好きなので、
この部分は大変興味深く読みました。
自分の頭で考えられることには限界があって、
どこか外部に、文字として残しておくことは大事です。
それは、依存症治療においても、同様に大事だということです。
手帳術や、ノート術というと、
ビジネスマンのためのライフハックと思われがちですが、
精神的な治療にも役立っていることが分かります。
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本書を読むと、依存症に関する見方が大きく変わると思います。
そして、
いま依存症になっているひとや、
かつて依存症だったひとに対して、
これまでとは違うリアクションが取れるのではないかと思います。
本書は、中高生だけでなく、
ぜひ多くの人に読んでほしい本だと思いました。