【読書】 世界史や人類史をネタに、化学雑学をたくさん紹介してくれる本

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左巻健男著「世界史は化学でできている」を読みました。

絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている
左巻 健男
ダイヤモンド社
2021-02-17



本書は、

  • 法政大学で、環境応用化学科の教授だった著者が、
  • 化学に関する雑学を、テーマごとにまとめて
  • その歴史的な経緯を、著者の推測をまじえつつ解説する本です。

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正直、タイトル詐欺です。

このタイトルの本を読みたい場合は、
ぜひ「炭素文明論」を読んでみてください。


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タイトルだけ読むと、
世界史を化学的知識で解説するかのように誤認してしまいますが、
実際は、世界史的要素はあまりないです。
(マリーアントワネットが一瞬だけ出てきたりはします)

残念ながら、この本で世界史の理解が深まるわけではありません。

あくまでも、世界史や人類史は導入として使われるだけで、
本書の本質は、化学雑学をたくさん紹介する本です。

逆に言えば、化学の雑学をたくさん仕入れる情報源として読めば、
内容の詰まった、良い本だと思いました。

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本書の内容は、
第1章から3章までが、原子についてで、
第4章以降で、さまざまな物質が扱われていきます。

雑学本として面白いのは、第4章以降だと思います。

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本書で触れられるテーマは、以下の通りです。
(目次から抜粋しています。)

  • 火の発明とエネルギー革命
  • 世界でもっともおそろしい化学物質
  • カレーライスから見る食物の歴史
  • 歴史を変えたビール、ワイン、蒸留酒
  • 土器から「セラミックス」へ
  • 都市の風景はガラスで一変する
  • 金属が生み出した鉄器文明
  • 金・銀への欲望が世界をグローバルにした
  • 美しく染めよ
  • 医学の革命と合成染料
  • 麻薬・覚醒剤・タバコ
  • 石油に浮かぶ文明
  • 夢の物質の暗転
  • 人類は火の薬を求める
  • 化学兵器と核兵器

目次からも分かる通り、本書後半では、化学の暗い部分についても触れられています。
化学万能主義のキラキラした未来観よりは、
こういった負の側面にも目を向ける書き方の方が、より現代的なのかもしれません。

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人類史において、農耕や定住が革命的な変化だったことは、
たとえば、國分功一朗著「暇と退屈の倫理学(新潮文庫)(amazon)」
などで知ってはいましたが、
より化学的な視点で、その革命性が分かりました。

また火の発見も、熱を扱う技術が高度になるにつれて、
陶器が磁器になったり、青銅器から鉄へ使える幅が広がったり、
技術の発展の様子が詳しく、しかも分かりやすい言葉で語られていました。

化学の入り口として、本書のような本は分かりやすく、
しかも雑学がたくさん手に入るので、話題に使えるので、
役に立つ本になっています。

気になった方は、ぜひ読んでみてください。