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左巻健男著「世界史は化学でできている」を読みました。
本書は、
- 法政大学で、環境応用化学科の教授だった著者が、
- 化学に関する雑学を、テーマごとにまとめて
- その歴史的な経緯を、著者の推測をまじえつつ解説する本です。
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正直、タイトル詐欺です。
このタイトルの本を読みたい場合は、
ぜひ「炭素文明論」を読んでみてください。
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タイトルだけ読むと、
世界史を化学的知識で解説するかのように誤認してしまいますが、
実際は、世界史的要素はあまりないです。
(マリーアントワネットが一瞬だけ出てきたりはします)
残念ながら、この本で世界史の理解が深まるわけではありません。
あくまでも、世界史や人類史は導入として使われるだけで、
本書の本質は、化学雑学をたくさん紹介する本です。
逆に言えば、化学の雑学をたくさん仕入れる情報源として読めば、
内容の詰まった、良い本だと思いました。
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本書の内容は、
第1章から3章までが、原子についてで、
第4章以降で、さまざまな物質が扱われていきます。
雑学本として面白いのは、第4章以降だと思います。
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本書で触れられるテーマは、以下の通りです。
(目次から抜粋しています。)
- 火の発明とエネルギー革命
- 世界でもっともおそろしい化学物質
- カレーライスから見る食物の歴史
- 歴史を変えたビール、ワイン、蒸留酒
- 土器から「セラミックス」へ
- 都市の風景はガラスで一変する
- 金属が生み出した鉄器文明
- 金・銀への欲望が世界をグローバルにした
- 美しく染めよ
- 医学の革命と合成染料
- 麻薬・覚醒剤・タバコ
- 石油に浮かぶ文明
- 夢の物質の暗転
- 人類は火の薬を求める
- 化学兵器と核兵器
目次からも分かる通り、本書後半では、化学の暗い部分についても触れられています。
化学万能主義のキラキラした未来観よりは、
こういった負の側面にも目を向ける書き方の方が、より現代的なのかもしれません。
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人類史において、農耕や定住が革命的な変化だったことは、
たとえば、國分功一朗著「暇と退屈の倫理学(新潮文庫)(amazon)」
などで知ってはいましたが、
より化学的な視点で、その革命性が分かりました。
また火の発見も、熱を扱う技術が高度になるにつれて、
陶器が磁器になったり、青銅器から鉄へ使える幅が広がったり、
技術の発展の様子が詳しく、しかも分かりやすい言葉で語られていました。
化学の入り口として、本書のような本は分かりやすく、
しかも雑学がたくさん手に入るので、話題に使えるので、
役に立つ本になっています。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。