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波多野誼余夫、稲垣佳世子著「無気力の心理学」を読みました。
本書は、
- 心理学、教育学の教授である著者が、
- 「無気力」「無力感」や、その逆の「効力感」についての研究成果を紹介し、
- ひとがやる気になるための教育方法を考えようとする本です。
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本書は、まず第1章から3章で、「獲得された無力感」というものを扱います。
ときどき、何をするのにも投げやりな人がいます。
「どうせダメだ」と二言目には言い、自己肯定感の低いひとです。
そういった人は、もしかしたら「無力感」を獲得してきたのかもしれません。
心理学の実験を通して、どのように無力感が獲得されていくのか、紹介されます。
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次に、第4章から6章で、無力感の逆、つまり「効力感」を扱います。
そもそも効力感とは何なのか、から始まり、
どのような経験がある人が、その力を培うことができるのか、紹介されます。
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さらに、第7章から9章で、教育(特に学校教育)における効力感のつけ方が紹介されます。
この部分は、実証されたものというよりは、筆者たちの類推を多く含んでいるものです。
なので、効力感が教育的に獲得させうるものなのか、本当のところは分かりません。
が、それを育むヒントのようにはなるかもしれません。
わたしは学校教育現場を知らないので、よく分かりませんが、
正直、筆者の書きぶりは、やや理想主義的のようにも思いました。
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最後の第10章は、アメリカと日本の文化比較になっています。
本書で出てくる心理学研究の多くはアメリカでの実験であり、
文化的な影響は無視できないからです。
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本書を通して、努力できることは、生まれながらの才能ではないということが分かります。
自分が努力すれば、何か良くなるだろう、と感じるのは、効力感があればこそで、
そのためには、小さいころからのちょっとした成功体験がモノを言います。
いわば、努力できるかどうかは、生まれた後の環境や教育次第ということです。
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本書は、学校教育を主体とする本なので、
大人になってしまってから、どうすればよいかは書かれていません。
しかしもし、そのような環境を、自分で用意できれば、
努力できる人になれるかもしれません。
そういう意味では、希望のある話だなと思いました。