スティーブンキング著「書くことについて」と、
森博嗣著「つぶさにミルフィーユ」を読みました。
これらは、特に何の脈絡も無く選んだ本だったのですが、
たまたま特徴が似ているので、2冊同時にまとめてみようと思いつきました。
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著者はどちらも小説家ですが、
しかし今回取り上げた本は、どちらも小説ではありません。
そして両者とも、書いている最中に生死をさまよったという、共通点があります。
生死をさまよった経験というのは、どうしても生き方にまつわる話になりがちです。
日本とアメリカ、それぞれのベストセラー作家が書く、「生き方」についてのエッセイです。
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まずは、「書くことについて」から。
実はわたし、スティーブンキングさんの小説を読んだことがありません。
「グリーンマイル」を映画で見たぐらいで、それも小さいころだったので、
何となくしか覚えていません。
私はもともとホラーが嫌いなので、「シャイニング」も「IT」も「ミザリー」も見ていません。
そんな私でも、もちろん「スティーブンキング」の名前は、知っています。
本書は、アメリカを代表するといっても良い小説家が、
「書くことについて」かなり詳細に教えてくれる本です。
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もともとは、「小説作法」という名前で売り出されていたぐらいなので、
小説家志望の方に、まずはダイレクトに役に立つでしょう。
ただし、それだけではありません。
文章の書き方についても、詳しく書かれているので、
どんなふうに人に伝えるのか、文章術の本としてもすぐれた内容になっていると思います。
そしてさらに、職業として小説を書く上での、
- やらなければならないこと、
- 自分へのノルマの課し方、
- 仕事相手への気づかい方
などが、おおよそカバーされています。
これはつまり、「プロとは何か」について考える
良いきっかけになるのではないでしょうか。
つまり、
- 小説家志望の方だけでなく、
- 文章を書く機会の多い方にも、
- 職業人としてのあり方について考えたい方にも、
役に立つ内容になっていると思います。
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次に、「つぶさにミルフィーユ」を紹介します。
森博嗣さんは、以前、「アンチ整理術」という本を読みました。
ミステリー小説(正確には、「森ミステリィ」と表記するらしい)を書いている人で、
10年ぐらい前に「引退」しました。
とはいえ引退後も、何冊も本を出している、あまのじゃくな作家さんです。
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森さんは、多作で、本書も彼のエッセイシリーズのうちの1冊です。
構成としては、100個のエッセイが、何となくつながりながら、並んでいます。
見開き2ページで、同じ分量なので、読みやすいと思います。
森さんの見方は、独特なので、好き嫌いは分かれるでしょう。
そんな見方があったんだ! と、新しい発見ができる人にとっては、
なかなか面白いエッセイになっていると思います。
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さて、この2冊は、どちらも生死について考えている本でもあります。
キングさんは、車にはねられました。
森さんは、車に乗っているときに原因不明の脳卒中で倒れました。
しかし、それに対する生き方は、かなり違います。
そもそも、2人は、小説に対するスタンスが全然違います。
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キングさんは、小説が好きで、好きで、たまらないから書いている人です。
一方、森さんは、模型製作が好きで、その費用を捻出するためにバイトとして小説を書いている人です。
このため、生死をさまよった後の、書くことについてのスタンスも、おのずと違ってきます。
キングさんは、文章が書けてうれしい、そのために頑張る、というスタンスなのに対して、
一方の、森さんは、毎日遺書を書くのも良いかも、という境地に達してしまいます。
自己啓発の名著である「7つの習慣」でも、最後(死)から考えるというものがあります。
死を想いながら(メメントモリ)、自分の働き方を見直す機会になるのではないかと思いました。
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「死を想う」だなんて、なんだか湿っぽい話になりがちですが、
この2冊のエッセイは、どちらも、とても読みやすく、
すっきりした書き方になっています。
働き方を考える延長に、生き方、さらに死に方まで考える、
とても良い書籍なのではないかと思います。