【読書】 読んでいない本について、堂々と語る方法

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ピエール・バイヤール著「読んでいない本について堂々と語る方法」を読みました。

読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)
バイヤール,ピエール
筑摩書房
2016-10-06


本書は、

  • パリ第8大学の文学教授である著者が、
  • さまざまな文学作品を取り上げながら
  • 本をめぐるコミュニケーションについて暴き出す本です。

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※注意してほしいことがあります!
本書のある部分では、「薔薇の名前」のネタバレをします。
もし「薔薇の名前」をミステリーとして読みたい方は、
本書を読む前に、「薔薇の名前」を読んでおいてください!

薔薇の名前〈上〉
ウンベルト エーコ
東京創元社
1990-02-18


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本書は、そのタイトルからして、
「ひろゆきとか好きそう」な人が好きそうな本ですが、
実際その通りかもしれません。

フランス人らしい、
「気が利いたことが言えちゃうおいらです」
とでも言いたげな文章を
これでもかとぶつけてくる本なので、
好きな人と嫌いな人がはっきり分かれると思います。

※ちなみに、わたしはひろゆきさんの文章好きです。

なお、本書を読めば、読書感想文が無限に書けるようになるわけではありません。

それに、本書で読書感想文を書くのは、結構難しいと思うのでオススメしません。

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さて、本書の内容を、目次からまとめます
(まるで、「特性の無い男」の図書館司書のように・・・。)

I 未読の諸段階

  1. ぜんぜん読んだことのない本
  2. ざっと読んだ(読み流した)ことがある本
  3. 人から聞いたことがある本
  4. 読んだことはあるが忘れてしまった本

II どんな状況でコメントするのか

  1. 大勢の人の前で
  2. 教師の面前で
  3. 作家を前にして
  4. 愛する人の前で

III 心がまえ

  1. 気後れしない
  2. 自分の考えを押しつける
  3. 本をでっち上げる
  4. 自分自身について語る

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目次を見るだけでも、本書の独特な雰囲気が分かると思います。

本書によれば、
本を「読まない」ことにも、さまざまなレベルがあり、
たとえば、電車の中吊り広告で本のタイトルを知った時点で、
すでに、一部は「読んでいる」かもしれないわけです。

また逆に、真に「読んでいる」状態(細かいディテールまで読んだ状態)
というのは、実はその本を「読んでいない」のかもしれないというのです。

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この状況は、かまいたち(というお笑い芸人のコンビ)が、
M1で披露した「トトロ見てない」という話にもつながる気がします。

(気になる方は、「かまいたち トトロ」で検索!)

この漫才中、かまいたちの山内(ボケ担当)は、
本当にトトロを見ていないと言い切れるのか?

その割には
「何度も再放送されている」とか、
「トトロは見た方が良い」とか、
トトロに関する情報を、たくさん知っているような気もします。

まさに、トトロの「位置は知っている」状態であって、
教養としてのトトロはすでに鑑賞しているわけです。

ということは、本書の定義で言えば、山内はもうすでに、
トトロを見ていると言っても過言ではないのかもしれません。

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とまあ、そんな細かいところはどうでも良いでしょう。

閑話休題。

ざっくり言ってしまえば、
本書は「読書と教養」のかかわりについて語っています。

教養が、人とのコミュニケーションにおいて、
どのような権力を発動するのかについて、
筆者は鋭い批評で斬りつけます。

10年以上前に見た動画で、(うろおぼえですが)
ある中堅の批評家が、若手批評家をいじめていて、

「僕はある時期の浅田彰さんの文章を、
 小さな雑誌記事やインタビューなども含めて、 
 すべて読んでいた。
 それぐらい浅田さんについて詳しい僕に、
 君は何が言えるのか」

みたいな論調で、若手論客を追い詰めていました。

まさに、ここに含まれている権力構造
(「僕は浅田彰に詳しい。だから文句言うな」という権力)こそが、
本書で明らかにされる権力なのでしょう。

もちろん、これが分かったからといって、
なにかが解決するわけではありません。

でも今後も、同様の権力はのさばり続けるでしょう。

なので、そのような権力がある(ありうる)ということを知っているだけでも、
無理めな議論に連れていかれた時の自衛策にはなるかもしれません。

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本書は、特殊な本です。

けれども、本について愛のある本ではあります。

本が好きな人には、ぜひ一度読んでみてほしい本です。

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