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加藤直美著「コンビニと日本人」を読みました。
本書は、
- 流通に詳しいコンサル兼ライターの著者が、
- コンビニ業界の現状をまとめた本です。
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筆者によれば、コンビニは当初、迷惑施設のような扱いだったそうです。
若い人が深夜までたむろし、騒いでいる場所、
売られているものも個食をすすめ、子どもたちをたぶらかす場所、
というイメージです。
それが、現在(本書の執筆は2012年)では、
災害時や緊急時のインフラを担うだけの存在になりました。
この間には、多様なコンビニチェーンの試みがあった、ということです。
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本書は、東日本大震災の翌年に書かれたこともあり、
災害対応に関する部分に多くのページが割かれています。
近年は、地方行政や警察が、コンビニと協定を結ぶ時代です。
- 24時間開店しており、深夜でも明るい
- 商圏が小さく、都市部に店舗がたくさんある
- 物流網が組織化されている
- 一定の物資が(商品として)貯蓄されている
などの特徴から、
コンビニは、災害時の大事なインフラになっているようです。
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本書の目次から抜粋します。
第1章 東日本大震災とコンビニ
- “ライフライン” としての自覚
- きっかけは阪神・淡路大震災
- 震災がもたらしたもの
第2章 人口減少とコンビニ
- 増えるコンビニ、減る人口
- 地域とコンビニ
- 買い物弱者とコンビニ
第3章 少子高齢化とコンビニ
- 高齢化とコンビニ
- 「おひとりさま」とコンビニ
- 高齢者対応サービスの変遷
第4章 ネット社会とコンビニ
- コンビニのサービス
- コンビニのコミュニケーション
第5章 コミュニティとコンビニ
- コミュニティのネットワーク化
- 相互扶助ネットワークの検証
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1点だけ、残念な点があるとすれば、
記述の仕方が極めて政治的であることです。
たとえば、セブンイレブンを取り上げれば、
必ず直後にローソンとファミリーマートを取り上げ、
記述を横並びにしています。
おそらく、大手3社への配慮なのでしょうが、
ライター側に、そういった配慮が必要と思わせるほど、
コンビニ同士の争いが熾烈だということなのでしょう。
そうであっても、もう少し突っ込んだ記述が、
もしくは多少なりとも批判的な記述が、
あっても良かったような気はしました。
本書の記述は、基本的にはコンビニ側の主張を
そのままなぞった形になっており、
よくまとまっているとは思うものの、
コンビニ業界が抱える問題点に関して
指摘しようといった感じはありませんでした。
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とはいえ、本書は近年のコンビニ業界の動向について、
コンパクトにまとまった本です。
物流や小売り業に興味がある方だけでなく、
食品関係や、サービス業全般に興味のある方にとっても、
十分面白い本に仕上がっていると思います。
ぜひ読んでみてください。