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小島寛之著「使える!経済学の考え方」を読みました。
本書は、
- 経済学者の著者が、
- 歴史上の経済学者が考える「自由」や「正義」に関して、
- 分かりやすく解説する本です。
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経済学の本というと、
- 2022年の株価はこうなる!!
- サラリーマン大家で不動産投資!!
- イナゴをひっかけて暗号資産取引き!!
みたいなイメージが先行しがちですが、
本書では、「自由」とか「正義」を扱います。
そして、本書あとがきによれば、
経済学の学会や学術書では、むしろ、本書で紹介したような議論の仕方をするのが定番なのだ、ということをご理解いただければと思います。
(p231)
とあり、経済学がやっている地味な(だけど大事な)側面を知ることができます。
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以下、目次から抜粋します。
序章 幸福や平等や自由をどう考えたらいいか
- 人々の幸せを論じる難しさ
- 本書は、幸福の問題を、数学を使って考える
- ブラウン神父から学ぶこと
第1章 幸福をどう考えるか ピグーの理論
- 「幸福」は「効用」で測る
- 大事なのは、「最後の1単位」が与える効用
- 「最良の社会」は「完全平等の社会」である ベンサム&ピグーの定理
- ピグーの論理の弱点
第2章 公平をどう考えるか ハルサーニの定理
- 人が完全に公平であるのはいつの時点か
- 期待効用はアンケートでわかる
- 人間の幸せについての幾何学
第3章 自由をどう考えるか センの理論
- 自由という魔物
- パレート原理とリベラリズム原理
- 潜在能力の国際比較
第4章 平等をどう考えるか ギルボアの理論
- ジニ係数で世界と日本の不平等を見てみる
- やはり、背後には不確実性についての認識
- ショケ期待値の公理系
第5章 正義をどう考えるか ロールズの理論
- 正義の二原理
- 基本財を使ってマックスミン原理を論証する
- マックスミン基準と不透明な未来
第6章 市場社会の安定をどう考えるか ケインズの貨幣理論
- 「欲望」と「安定」のトレードオフ
- 流動性選好が不況の元凶
- 「二股をかけたい」という欲望
終章 何が、幸福や平等や自由を阻むのか
- 学校教育と平等
- 階級は教育によって固着化される
- 貧乏人はなぜ金持ちに忠誠心を持つのか
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とくに終章では、筆者自身の経験も書かれており、
とても「読ませる」文章だと思いました。
こういうところは、なんとなく「ちくま新書」っぽいです。
筆者は恵まれているとはいえない家庭出身の東大卒ですが、
東大における同級生の親の収入、
および仕事としていた学習塾の生徒の教育にかける教育投資額をみて、
平等とは何か、を考えざるを得なくなります。
結果的に、それが筆者を経済学に向かわせたのでしょう。
小島寛之さんの本はこれまでも何冊か読んできていますが、
本書がいちばんウェットな書きぶりになっていると思いました。
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本書は、派手な経済学を知りたいひとには役に立たないかもしれません。
しかし、社会とはどうあるべきかを考えたいひとにとっては、役立つと思います。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。