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メレディス・ブルサード著「AIには何ができないか」を読みました。
本書は、
- コンピュータに関するジャーナリストである著者が、
- AIをはじめとする、コンピュータサイエンスの限界について、
- 技術的事例や社会的事例をあげながら紹介する本です。
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本書は、おおまかに3つの部に分かれています。
第I部は、コンピュータサイエンスの基本的な知識がまとまっていて、
入門者にとっては、ここだけ読んでも十分役に立つ本です。
しかし、著者が伝えたいところは、そのあとの第II部と第III部です。
わたしたちは何となく、AIがいつか人間を超えて、
何でも “ええ感じに” やってくれる未来が来ると信じています。
しかし、著者は、それは勘違いであると言います。
どの程度、どのように勘違いなのかが、
この第II部から第III部にかけて語られます。
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そもそも、AIとかロボットというと、日本人はドラえもんみたいなAIを想像します。
のび太くんの悩みを聞いてくれたり、助けてくれたり、ときには怒ってくれたりします。
しかし、ドラえもんのような「汎用型AI」は、現状存在していませんし、
著者の予測によれば、今後もしばらく、実現しそうにありません。
現状、汎用型AIっぽいもの(スマホの音声対話や、囲碁を打つなど)は、
よくできた「特化型AI」でしかないのです。
特化型AIは、単なる道具です。
特化型AIを極めた先に、汎用型AIができるわけではありません。
何かしらの、技術革新が必要ですが、それがどのように起こるか、
そもそも革新が起こるかどうかさえ、分かっていません。
このような主張は、著者独りが主張しているのではありません。
日本のAI研究者の書籍でも、似たようなことが書いてありました。
たとえば、「相対化する知性—人工知能が世界の見方をどう変えるのか(amazon)」など。
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汎用型AIができない、という大まかな限界が分かりました。
しかし本書で著者は、さらにもう一歩踏み込みます。
もっと技術的な、あるいは社会的な限界が語られることになるのです。
その具体的な問題点は、
- 電子データと現実が乖離する問題
- コンピュータサイエンス界隈が、数学至上主義や男性優位に偏っている問題
- 自動車の自動運転における生命倫理の問題
- たくさんの “いいね” が、必ずしも良いことを意味しない問題
などです。
特に2点目の男性優位は、著者が女性だからこそ鋭く描ける問題かもしれません。
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これらの問題点については、ぜひ本書を読んでいただきたいですが、
いずれの事例も、著者自身の具体的な体験を交えて書かれているので、
読みやすく、想像しやすくなっていました。
AIについて、ざっくりと知りたいという方には、
ぜひ読んでみていただきたいと思いました。