LIXILの株主総会行ってみたかった

働き方

秋葉大輔著「決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8ヶ月」を読みました。

本書は、

  • 元創業家から会社を追い出されたプロ経営者が、
  • 仲間と協力しながら、株主総会の議決でCEOに復帰するまでを、
  • プロ経営者側の視点で書いた本です。

元創業家の潮田洋一郎氏や、暫定CEOの山梨広一氏などは、悪役として描かれています。
なので、山梨氏のビジネス本を読んだことのある山梨ファンの方は、本書を読むのは注意してください。


本書を読んでいて、つくづく目立つのは、潮田さんに人望がありません。

潮田洋一郎さんは、もともとトステムという会社の御曹司でした。(LIXILは、トステムとINAXが合併した企業)
お父さんが会社を大きくして、彼自身も東大を出て、経営については一家言あります。

潮田さんの経営理論は、「事業会社と持ち株会社を明確に分けるべき」とか「利益よりも売上」とか「積極的なM&Aでバックヤードを共通化すれば効率化される」とかで、そこだけ抜き出せば、そういうことを言う人も一定数いるだろうな、というぐらいのことです。

ところが、とにかく現場を知らないため、社内での評価は最悪です。
また、自分自身が3%しか株式を保有していないにもかかわらず、オーナー社長のような振る舞いをしたことで、INAX系の創業家からもうとまれています。
潮田氏が暫定CEOになった瞬間、株価暴落で、投資家からの支持もありません。

さらに、シンガポールへ移住し、LIXILの本社移転も計画しており、それが遺産相続や日本への納税逃れのためと疑われ、週刊誌でバッシングされ、一般市民からの反感を買うことにもなります。

とにかく、笑ってしまうぐらい全方位に味方がいません。


一方、山梨さんは、マッキンゼーに25年もいた人で、それなりに優秀な(はずの)ひとですが、本書では潮田さんのあやつり人形としてしか機能しません。

(山梨さんのビジネス本もいくつか出ていますし、ちゃんと好評なものもあるようなので、それらの本もいつか、ちゃんと読んでみたいと思います。)

しかし、本書で描かれる山梨さんには、自我がありません。
潮田さんに相談しなければ、何にも決められないひと、という印象です。


とはいえ、注意しないといけないことがあります。

本書は、最終的に株主総会の議決で勝利するプロ経営者の瀬戸さん側から見た本です。
よって、上記のような印象は、多少割り引いて読んでいく必要はあるだろうと思いました。

最終決戦の株主総会も、議決権が50パーセント前後で意見が拮抗しており、実際にそこに参加できていたら、大変スリリングなところだったろうと思います。

そのワクワク感は、本書を読みながら十分味わえるので、ぜひ気になった方は読んでみていただければと思います。