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宮路秀作著「経済は統計から学べ!」を読みました。
本書は、
- 代々木ゼミナールで地理の講師をしている著者が、
- 6種類の統計情報から、最新の経済について解説する本です。
6種類の統計というのは、
- 人口 :少子高齢化で世界はどうなる?
- 資源 :経済とは「土地と資源の奪い合い」
- 貿易 :生き残るには「強み」を磨くしかない
- 工業 :「産業革命」から読み解くこれからの世界
- 農林水産業 :先進工業国は先進農業国でもある
- 環境 :経済発展と持続可能性を両立させる
の6種類です。
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宮路さんの著作は、以前にも読んでいました。
同じダイヤモンド社から、同じシリーズですね。
今回の「統計から~」は、前作「地理から~」より詳しくなっています。
その分、読み込むのにも時間がかかりますから、一長一短でしょう。
日ごろ文章を読みなれている方は、「統計から~」を読めば、
最新の統計情報が分かるようになっていますから、それで十分だと思います。
とはいえ、あまり詳しくない方は「地理から~」を先に読んだ方が
スムーズに知識がつながるだとうと思います。
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目次から内容を抜粋します。
第1章 人口とデータ
- 人口から読み解く「これから伸びる国」
- 世界最高の労働生産性を誇る国は?
- 労働者としての移民は歓迎すべきか?
第2章 資源とデータ
- 資源戦争は「輸出余力」で読み解ける
- 「シェール革命」は資源戦争をどう変えた?
- 日本は世界5位の「再生可能エネルギー国家」
第3章 貿易とデータ
- 「アメリカからアジアへ」日本の生存戦略
- 数字が語る「アメリカ・ファースト」の歴史
- スイスが仕掛けた「外貨戦争」とは?
第4章 工業とデータ
- 自動車戦争:中国 vs インド
- 海洋国家の駆け引き:船籍ビジネスの基本戦略
- 通常兵器の輸出入から読み解く「世界の緊張関係」
第5章 農林水産業とデータ
- インドが世界一の米輸出国になれた理由
- 漁業を見れば、「伸びる国」が先読みできる
- 日本は世界第2位の水産物「輸入」国
第6章 環境とデータ
- エジプトが享受する世界遺産の経済効果
- 「先進国から発展途上国へ」海外旅行と経済
- ニュータウンに学ぶ「都市・人口・経済」のつながり
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面白かったのは、シェール革命のところです。
アメリカが脱石炭に踏み切れたのは、
結局のところシェール革命があったからなんでしょうね。
そのあおりで、
小泉進次郎さんが環境大臣だったとき
脱石炭と言い出したわけですが、
果たして今後どうなるんでしょうかね。
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また、「スイスフラン・ショック」についても書かれています。
わたしはFXはやっていないのですが、
2015年に、スイスフランが大暴落したときは、
ツイッターでも2ちゃんでも、たくさんの阿鼻叫喚が聞かれました。
その仕組みがイマイチ分かっていなかったのですが、
本書を読んで、その経緯がよく分かりました。
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少し脱線しますが、
本書を読んで、地理的な知性って大事だなと思いました。
最近、「親ガチャ」という言葉がはやりました。
こどもの学力は、親からの才能と教育環境に左右されるので、
自分が努力しても、親次第でどうにもならないことがある、
というような意味だと思います。
まあ、言いたいことは分かりますし、
そういう影響も多分にあることは認めますが、
とはいえ、だから努力しなくて良いということにはなりません。
そこで地理です。
世界にはたくさんの国があって、
山と谷が多く高低差の大きい国、
排他的経済水域の広い国、
石油がたくさん採れる国、
日光がたくさん当たる国、
いろんな国があります。
それぞれの地理的な前提から、
農作物を作ったり、
電力を発電したり、
それぞれの国の産業が発達します。
人口の大小で、域内経済が回るかどうかも変わりますが、
それは前提として受け入れなければならない問題です。
人間と国家と同一視するのは、
いつも正しいとは限りませんが、
それぞれの国の為政者なり官僚なりが、
知恵を絞って、自国の利益を最大化していこうとする姿勢については、
ひとりの人間として、学ぶことが多いような気がします。
「親ガチャ」とかが気になるというひとは、
とりあえず地理を学べば良い、と思いました。
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本書は、前作同様、
「地理とは地球上の理(ことわり)である」
という観点から書かれています。
受験地理とはまた違った、
地理の楽しみ方ができる本だと思いますので、
ぜひ読んでみてください。
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