【読書】 ぼくたちに地理的な知性が必要な理由

※かじとじむ(当サイト)は、ふだんはネット情報のまとめサイトですが、ときどき管理人が読んだ本をまとめています。読書タグや、ざっくりまとめタグからどうぞ!


宮路秀作著「経済は統計から学べ!」を読みました。

経済は統計から学べ!
宮路 秀作
ダイヤモンド社
2021-06-30


本書は、

  • 代々木ゼミナールで地理の講師をしている著者が、
  • 6種類の統計情報から、最新の経済について解説する本です。

6種類の統計というのは、

  1. 人口 :少子高齢化で世界はどうなる?
  2. 資源 :経済とは「土地と資源の奪い合い」
  3. 貿易 :生き残るには「強み」を磨くしかない
  4. 工業 :「産業革命」から読み解くこれからの世界
  5. 農林水産業 :先進工業国は先進農業国でもある
  6. 環境 :経済発展と持続可能性を両立させる

の6種類です。

===

宮路さんの著作は、以前にも読んでいました。

同じダイヤモンド社から、同じシリーズですね。

今回の「統計から~」は、前作「地理から~」より詳しくなっています。
その分、読み込むのにも時間がかかりますから、一長一短でしょう。

日ごろ文章を読みなれている方は、「統計から~」を読めば、
最新の統計情報が分かるようになっていますから、それで十分だと思います。

とはいえ、あまり詳しくない方は「地理から~」を先に読んだ方が
スムーズに知識がつながるだとうと思います。

===

目次から内容を抜粋します。

第1章 人口とデータ

  • 人口から読み解く「これから伸びる国」
  • 世界最高の労働生産性を誇る国は?
  • 労働者としての移民は歓迎すべきか?

第2章 資源とデータ

  • 資源戦争は「輸出余力」で読み解ける
  • 「シェール革命」は資源戦争をどう変えた?
  • 日本は世界5位の「再生可能エネルギー国家」

第3章 貿易とデータ

  • 「アメリカからアジアへ」日本の生存戦略
  • 数字が語る「アメリカ・ファースト」の歴史
  • スイスが仕掛けた「外貨戦争」とは?

第4章 工業とデータ

  • 自動車戦争:中国 vs インド
  • 海洋国家の駆け引き:船籍ビジネスの基本戦略
  • 通常兵器の輸出入から読み解く「世界の緊張関係」

第5章 農林水産業とデータ

  • インドが世界一の米輸出国になれた理由
  • 漁業を見れば、「伸びる国」が先読みできる
  • 日本は世界第2位の水産物「輸入」国

第6章 環境とデータ

  • エジプトが享受する世界遺産の経済効果
  • 「先進国から発展途上国へ」海外旅行と経済
  • ニュータウンに学ぶ「都市・人口・経済」のつながり

===

面白かったのは、シェール革命のところです。
アメリカが脱石炭に踏み切れたのは、
結局のところシェール革命があったからなんでしょうね。

そのあおりで、
小泉進次郎さんが環境大臣だったとき
脱石炭と言い出したわけですが、
果たして今後どうなるんでしょうかね。

===

また、「スイスフラン・ショック」についても書かれています。

わたしはFXはやっていないのですが、
2015年に、スイスフランが大暴落したときは、
ツイッターでも2ちゃんでも、たくさんの阿鼻叫喚が聞かれました。

その仕組みがイマイチ分かっていなかったのですが、
本書を読んで、その経緯がよく分かりました。

===

少し脱線しますが、
本書を読んで、地理的な知性って大事だなと思いました。

最近、「親ガチャ」という言葉がはやりました。
こどもの学力は、親からの才能と教育環境に左右されるので、
自分が努力しても、親次第でどうにもならないことがある、
というような意味だと思います。

まあ、言いたいことは分かりますし、
そういう影響も多分にあることは認めますが、
とはいえ、だから努力しなくて良いということにはなりません。

そこで地理です。

世界にはたくさんの国があって、
山と谷が多く高低差の大きい国、
排他的経済水域の広い国、
石油がたくさん採れる国、
日光がたくさん当たる国、
いろんな国があります。

それぞれの地理的な前提から、
農作物を作ったり、
電力を発電したり、
それぞれの国の産業が発達します。

人口の大小で、域内経済が回るかどうかも変わりますが、
それは前提として受け入れなければならない問題です。

人間と国家と同一視するのは、
いつも正しいとは限りませんが、
それぞれの国の為政者なり官僚なりが、
知恵を絞って、自国の利益を最大化していこうとする姿勢については、
ひとりの人間として、学ぶことが多いような気がします。

「親ガチャ」とかが気になるというひとは、
とりあえず地理を学べば良い、と思いました。

===

本書は、前作同様、
「地理とは地球上の理(ことわり)である」
という観点から書かれています。

受験地理とはまた違った、
地理の楽しみ方ができる本だと思いますので、
ぜひ読んでみてください。

かじとじむ のオススメ記事: