※かじとじむ(当サイト)は、ふだんはネット情報のまとめサイトですが、ときどき管理人が読んだ本をまとめています。読書タグや、ざっくりまとめタグからどうぞ!
宮路秀作著「経済は地理から学べ!」を読みました。
本書は、各国の経済的な状況を、地理という「土台」までさかのぼって考えることのできる本です。
著者は、代ゼミの地理の先生です。
日々、受験生に教えているためだと思いますが、
説明の仕方がとても丁寧で、読みやすい本です。
前提となる知識からセットで教えてくれるので、
地理に詳しい人でなくても、楽しく読めるのではないかと思います。
===
なお、地理の本といいつつ、
本書には歴史も、国際政治も、そしてもちろん経済も出てきます。
これらに共通しているのは、地理という土台があるという点です。
著者は、「地理とは地球上の理(ことわり)である」と言います。
これは、
「さまざまな現象が、じつは、見えない理屈でつながっている」
みたいなイメージだと思います。
その見えない理屈の部分を明らかにするのが、
「地理」という学問だ、ということです。
===
これはたとえば、序章で出てくるアイスランドです。
アイスランドは、名前の通り寒冷な国です。
このため、
- 氷河の侵食でできた谷が多くあり、
- その谷による高低差を利用して、
- 水力発電(水の落下による発電)が盛んになります。
アイスランドの水力発電量は、国全体の74%にもなるそうです。
そしてさらに、
- 水力による安価な発電ができることで、
- 電力をたくさん使う産業(=アルミニウム製造)が発達する。
- 実際、アイスランドの輸出品目2位は、アルミニウム。
というところにつながります。
こんな風に、ひとつひとつの知識がつながっていくわけですが、
その土台には、
「アイスランドが寒冷な地域であり、氷河の侵食がある」
という事実があります。
===
目次から、面白かったところを抜粋していきます。
序章:経済をつかむ「地理の視点」
- 自然:地球が人類に与えた「土台」とは?
- 資源:なぜ奪い合いが起きるのか?
- 距離:経済は「4つの距離」で動いている
第1章:立地 地の利で読み解く経済戦略
- 地の利を生かした「インドのシリコンバレー」
- イギリスのEU加盟がアジア・太平洋に与えた「影響」とは?
- 北半球の重要拠点、アンカレジ空港が持つ地理的優位性
第2章:資源 資源大国は声が大きい
- 「水道水が飲める国」資源大国としての日本
- アルミニウムがわかれば、資源大国がわかる
- EUに加盟しない実力国、ノルウェーの正体
第3章:貿易 世界中で行われている「駆け引き」とは?
- オーストラリアの稼ぎ方 豊富な資源を自国利用しない
- 中国が投資を急ぐタンザニアのポテンシャル
- 貿易黒字なのに経済が発展しないメカニズム
第4章:人口 未来予測の最強ファクター
- 人口大国の共通点は「5つの農作物」
- なぜ人々は東京に集まるのか?
- 日立市の人口が減って、豊田市の人口が増えた理由
第5章:文化 衣食住の地域性はなぜ成り立つのか?
- シンガポールの強さは「みんな仲良く」
- イギリス料理が「マズい」といわれる本当の理由
- 牛肉輸出量世界一! インドを支える「牛」の力
===
ひとつひとつの節も面白いのですが、
それらが、章ごとにおおまかにつながっています。
このおかげで、あまり知らない分野でも、
どんどん読み進められる本になっています。
面白い本だったので、ぜひ読んでみてください。
===
なお本書には、続編の「経済は統計から学べ!」が出たそうなので、
近いうちに、こちらも読んでみたいです。
かじとじむ のオススメ記事: