【読書】 病院食を 少なく食べることで 長生きできたという 伝説的人物

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ルイジ・コルナロ著「無病法 極少食の威力」を読みました。

無病法
ルイジ・コルナロ
PHP研究所
2014-07-04


本書は、

  • ルネサンス時代のヴェネツィアで、102歳まで生きた貴族が、
  • 病院食を、ごく少量食べるという健康法をお勧めする本です。

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コルナロの著作となっていますが、
本書の半分以上は、解説者(中倉玄喜さん)の自説です。

しかし正直、中倉さんの自説は、他の研究者の受け売りで、あまり役に立ちません。
なので、基本的にはコルナロの部分だけ読んでいくのがオススメです。

(PHP研究所は、こんなやっつけ仕事やってる場合なんでしょうか。
 今の出版不況を生き残れるのか不安ですね。)

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本書はじつは、先日読んだ「ライフスパン」でも紹介されていた本でした。

なので、本書の趣旨は、

  • 食べる量を減らせば、長生きできる

という、ライフスパンと同じ結論になります。

しかし、ライフスパンが、最新科学の結果をもとに解説するのに対し、
本書は、歴史の重みで説得力を持ちます。

たしかに、古い時代の貴族が残した健康法というのは本書の特長でしょう。

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内容をざっくり説明します。

著者のコルナロは、35歳までは、暴飲暴食の放蕩を尽くし、
不摂生な食事を続けていました。

そのため、

  • 痛風、
  • 胃の痛み、
  • 微熱やのどの渇き、
  • ささいなことで怒りっぽくなり、
  • やがて死の危険にまでさらされます。

このため、コルナロは心を入れ替え、
医者からの、以下のような忠告を受け入れます。

  • 食べ物にしても飲み物にしても、
  • 通常病気のときにしか摂らないものをとり、
  • しかもこれらをごく少量にかぎって摂る

つまりは、食べものの質は、消化に良い病院食とし、
しかも、量は、少量に限るというわけです。

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その結果、コルナロは健康になり、102歳まで生きました。

このように書くと、もしかしたら、具体的に何グラム食べていたか、気になる方もいるかもしれません。

本書には、何グラムだったかの記載も、あるにはあります。

しかし、そもそも本書で大事なのは、以下の文章に見られるような、コルナロの健康に対する姿勢ではないかと思います。

私がいう生活習慣をとり入れた者は、いまや自分自身が自分の医者となる。しかも、その医者は最良の医者である。言いかえれば、自分の体にとって、自分自身のほか、いかなる名医もありえない。人の体質はそれぞれ違っているので、自分でなんども試行錯誤を経験することなくしては、自分の体質を見きわめたり自分に合った食べ物を選択したりすることなど、できないからである。

(p35)

この部分は、めちゃめちゃ大事です。

平均的に健康的な行動があったとしても、自分自身が平均的な身体でなければ、それは無意味です。

わかりやすい例で言えば、

  • 身長190センチのひとにとっての、平均的に良い食べる量と、
  • 身長140センチのひとにとっての、平均的に良い食べる量は、違うはずです。

身長は見た目で分かりやすいですが、
肝臓など消化器官の能力差や、遺伝、脳の活動量の違いなど、
目に見えない部分の影響も十分大きいはずです。

ということは、ひとりひとりが、自分の体をよく観察して、自分にとっての最適解を見つけていく必要があるわけです。

だから、一概に「何グラムしか食べなかった」から、良い/悪いのだ、とは言えないはずです。

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コルナロは、別のところでこんな風にも言っています。

私が最初に試みたことは、俗にいわれていた、「口に合うものは体にも合い、体に合うものは口にも合う」という格言が本当にそうなのかどうか、その真偽をたしかめることであった。その結果、私はこの格言が間違っていることを発見した。

(p28)

自分への観察がまず最初にあり、その結果として、健康があるはずです。

この順序を間違えると、「健康を求めるあまり自分を見失う」という、へんてこなことになります。

これこそが、観察とその帰結からあいだの論理を探求するという意味で、真に科学的であるだろうと思います。

某メンタリストや、そのとりまきたちの、科学的(統計的)集計だけをもとに、飛びつきやすい結論だけをもとめるような振る舞いは、じつは全く科学的ではないのかもしれません。

しかし残念ながら、本書の解説者である中倉氏も、同じ間違いを繰り返しています。

中倉氏は、科学者でもなければ、歴史家でもありません。
翻訳家の仕事に徹していたら良かったのになー、と思わずにはいられません。
改めて、PHPの編集は何やってんだか・・・、残念でなりません。

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繰り返しますが、本書のコルナロ部分は、本当に良いことが書かれています。

もし機会があれば、ぜひ読んでみてください。