※かじとじむ(当サイト)は、ふだんはネット情報のまとめサイトですが、ときどき管理人が読んだ本をまとめています。読書タグや、ざっくりまとめタグからどうぞ!
斎藤幸平著「人新世の「資本論」」を読みました。
本書は、
- 新進気鋭のマルクス研究者である著者が、
- 人新世である現代において、
- どのような経済学が可能か考える本です。
===
そもそも「人新世」とは何でしょうか?
ものすごくざっくり言うと、
「人間のやったことが世界全部に影響し、その影響が人間にも返ってくる時代」です。
外部の無い時代ともいえます。
環境問題が事例にあげられていますが、
人間の行動、特に先進国における無意識の生活様式は、
はじめのうちは、そのひとたちの見えないところに転嫁されていきます。
しかし、やがて見えなかった悪影響が、自分自身に返ってくるようになります。
それが現代です。
===
たとえば、平安時代とか、江戸時代ぐらいならば、
多少、人間が無理をしても、自然界に及ぼした影響が、
人間に跳ね返ってくることはありませんでした。
延暦寺や本能寺を焼き討ちしても、
二酸化炭素濃度の上昇は微々たるものであり、
温暖化には結びつきません。
しかし、現代は違います。
化石燃料を燃やすことで、わたしたちの生活は成り立っており、
その影響が、温暖化に結び付いています。
これをどうすればよいのか、さまざまな人が考えを出しています。
===
よくあるアイディア(そして本書で批判されるアイディア)が、
「加速主義」です。
資本主義の力で技術革新をして、
温暖化しないエネルギー供給や、環境問題を起こさない生活様式が獲得されるだろう、
という見込みです。
===
本書では、この加速主義を批判しつつ、
資本主義そのものを辞めない限り、
人新世において、人類は生き残れないと主張します。
そして、その主張の根拠として、
「資本論」を書き、資本主義を批判していたマルクスが
召喚されることになります。
===
とはいえ、本書の中盤あたりは、ややつまらない内容です。
晩期マルクスが考えていたことが、最近の研究で明らかになりつつあり、
それを加味すると、現代の問題が、マルクスのアイディアで解かれるのではないか、
というところが、(おそらく)本書の面白いところなのだろうと思います。
しかし、そもそもわたしは、
前期マルクスにも、後期マルクスにも詳しくないし、
それどころか、マルクス主義が華やかだった時代はもちろんのこと、
批判された時代さえ知らない読者です。
晩期マルクスの新しさを、いくら著者が訴えても、
いまいちピンと来ないのです。
たぶん、マルクス主義全盛の世代、
もしくはマルクス主義に批判的だった世代のひとたちなら、
本書中盤の議論は、楽しく読めるのかもしれません。
===
本書の後半において、著者なりの指針が紹介されます。
それは、ひとことで言えば、「脱成長コミュニズム」への転換です。
そして、それには以下5つの柱があります。
- 使用価値経済への転換
- 労働時間の短縮
- 画一的な分業の廃止
- 生産過程の民主化
- エッセンシャル・ワークの重視
詳しい内容は、本書を読んでみてください。
特に5つ目の柱では、以前読んだ「ブルシットジョブ」が紹介されたりして、
資本主義批判が、こんな風につながっていくのか、と面白く読みました。
===
本書終盤では、政治活動への参加が呼びかけられます。
わたし個人としては、それほどそそられなかったのですが、
人によっては、本書をきっかけに、政治活動へ開眼する可能性もあります。
人生を変える1冊になるかもしれません。
気になった方は、ぜひ読んでみてください。
===
~かじとじむからのお知らせ~
読書はしたいけど、どうしても目で読む時間が取れない方へ。
ぜひ耳から聞く読書を試してみてください。
アマゾンのサービスはこちら:
Audible オーディオブック
日本企業のサービスはこちら:
通勤中に本が聴けるアプリ – audiobook.jp