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デヴィッド・グレーバー著「ブルシット・ジョブ」読みました。
この記事は、本書を紹介する3つ目の記事です。
1つ目の記事で、ブルシット・ジョブの具体例をまとめサイトっぽくまとめました。
2つ目の記事で、社会問題一般に応用できそうな、著者の考え方をまとめました。
今回は、全体像を目次をみながら眺めてみることにします。
そもそも、本書は、
人類学者で活動家の著者が、
今の労働に対して問題提起している本です。
あくまでも問題提起なので、解決策は書いていません。
(最後の方で、におわせるのですが、におわせるところで終わりです。)
(最後の方で、におわせるのですが、におわせるところで終わりです。)
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じゃあ、問題は何かというと、以下のようなものです。
- 諸産業が発達して、生産性が上がっているはずなのに、
- 仕事はぜんぜん減っていない。
- それどころか、クソどうでもいい仕事(=ブルシット・ジョブ)ばかりが増えている。
なぜなのか?
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この問題を整理するため、
- ブルシット・ジョブを定義し、
- どんな具体例があるのか事例を紹介し、
- それが個人的にどんな問題として現れるのか考察し、
- 社会的・経済的にどんな問題として現れるのか考察し、
- 文化的・政治的にどんな問題として現れるのか考察したのが、
本書の役割です。
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本書はもともと、2013年に雑誌に書かれた、
「ブルシット・ジョブ現象について」という小論から始まっています。
この小論は、本書の3ページから10ページにかけて、
まるまる掲載されています。
この小論で展開された問題を、肉付けしていったのが本書だといえます。
もし、本書を買うかどうか、迷っている方は、
本屋さんで、この小論部分だけでも読んでみてください。
この部分が、
- 面白そうだったら買う、
- そうでもなかったら買わない、
という判断で、いいのではないかと思います。
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目次と小見出しを書き出してみます。長いです。
序章 ブルシット・ジョブ現象について
第一章 ブルシット・ジョブとはなにか?
- マフィアの殺し屋がブルシット・ジョブの好例とならないのはなぜか
- 主観的要素の重要性について、あるいは、ブルシット・ジョブをおこなっていると考えている人びとは基本的に正しいと想定できるのはなぜか
- ブルシット・ジョブのおおかたは公共部門にかぎられているとする、よくある誤解について
- 美容師がブルシット・ジョブの例として適当でないのはなぜか
- 部分的なブルシット・ジョブ、おおよそのブルシット・ジョブ、純粋かつ完全なブルシット・ジョブの違いについて
第二章 どんな種類のブルシット・ジョブがあるのか?
- ブルシット・ジョブの主要五類型
- 取り巻きの仕事
- 脅し屋の仕事
- 尻ぬぐいの仕事
- 書類穴埋め人の仕事
- タスクマスターの仕事
- 複雑で多形的なブルシット・ジョブについて
- 二次的ブルシット・ジョブについて一言
- 最後の注記 ―以下の問いへの簡潔な立ち戻り― ブルシット・ジョブに就いていながら、そのことを認識していないということはありうるのか?
第三章 なぜ、ブルシット・ジョブをしている人間は、きまって自分が不幸だと述べるのか?(精神的暴力について、第一部)
- 楽な仕事を手に入れたようにみえたのに、その状況が手に負えないものだと気がついた、ひとりの青年について
- ブルシット・ジョブの核心たる虚偽と無目的の経験についての考察、さらには、虚偽と無目的の経験を若者に伝達することがいまや重要だと感じられていることについての考察
- 人間の動機にかんする基本的想定の多くが正しくないようにみえるのはなぜか
- 雇用目的仕事、とりわけ他者の時間を買うという概念の歴史についての若干の追記
- 時間の道徳観念と自然な労働リズムの衝突、それによって生まれる反感について
第四章 ブルシット・ジョブに就いているとはどのようなことか?(精神的暴力について、第二部)
- ブルシット・ジョブに就くことが、いつも必ずや悪いものだとはかぎらないのはなぜか
- あいまいであることの惨めさと欺きを強いられる惨めさについて
- 原因になれない惨めさについて
- 惨めである資格がないと感じる惨めさについて
- 自分が危害をくわえていると認識することの惨めさについて
- 終結部=人間の創造性に対するブルシット・ジョブの影響と、無意味な仕事に対して創造的または政治的に自分を主張しようとする試みがなぜ精神的な戦争の一形態と考えられるかについて
第五章 なぜブルシット・ジョブが増殖しているのか?
- 因果関係と社会学的説明の性質についての短い補論
- ブルシット・ジョブをつくり維持するにあたって、政府がはたす役割についての雑考
- ブルシット・ジョブの上昇についてのいくつかの誤った説明について
- なぜ金融産業をブルシット・ジョブ創出の範例とみなしうるのか?
- 現在の経営封建制の携帯が古典的封建制と似ている点と異なっている点
- 経営封建制は、クリエイティヴな諸産業において、いかにして中間的エグゼクティヴ気分のはてしない増殖を通してあらわれるのか
- 三つのレベルの因果関係という問題にかんたんに立ち返りつつの結論
第六章 なぜ、ひとつの社会としてのわたしたちは、無
意味な雇用の増大に反対しないのか?
意味な雇用の増大に反対しないのか?
- 絶対的な価値尺度をあきらかにすることの不可能性について
- 現代社会に生きるほとんどの人びとは、たとえそれがなんなのか明確にすることが困難であったとしても、どのようにして経済的価値とは峻別される社会的価値という概念を受け入れているのか
- 仕事の社会的価値とその対価として支払われる金額の転倒した関係について
- 労働に対するわたしたちの態度の神学的起源について
- ひとが一人前の大人とみなされるにあたって必要なものとしての支払い労働の概念の北部ヨーロッパ起源について
- いかにして、資本主義の出現とともに、さまざまの地域で、仕事が社会改革の手段、そしてついには、それ自体で価値のある美徳とみなされるようになったのか、そして、いかにして労働者たちは、労働価値説を受け入れることによって抵抗したのか
- 一九世紀に浸透した労働価値説の重大な欠陥とその欠陥に資本の所有者がいかにつけこんだのかについて
- ニ〇世紀の過程で仕事がいかにして主に規律と自己犠牲の形態としてますます価値づけられるようになってきたのか
第七章 ブルシット・ジョブの政治的影響とはどのようなものか、そしてこの状況に対してなにをなしうるのか?
- 経営封建制のもとでの政治文化が、いかにさまざまの反感の均衡によって維持されるようになっているのかということについて
- ロボット化にまつわる現在の危機がどのようにブルシット・ジョブという、より広範な問題と関係しているのか
- ブルシット化の政治的細分化およびその結果として惹き起こされるケアリング部門の生産性の低下、そしてそれとケアリング諸階級の反乱の可能性との関係について
- 仕事と報酬を切り離し本書で論じてきたジレンマを終結させる構想の一案としての普遍的ベーシックインカム
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小見出しが、もはや文章の長さになっており、
ぜんぜん見出しっぽくないわけですが、
まあ、こういう書き方も、あるのでしょう。
上記のような、目次と小見出しを読むだけでも、
何となく雰囲気は伝わるのではないかと思います。
やや難しい本なので、お休みの日に、ゆっくり読んでみてください。
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