【読書】統計の数字よりも、小説のほうが心を動かすわけ

ロルフ・ドベリ著「Think Smart」読みました。


本書は、スイス出身の文筆家、経営者でもある著者が、
心理的な思い込み、つまづきやすいポイントをまとめたものです。

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同じ著者の前の本は、以前に読んでいました。
 
今回の著作も、前作と同じような構成でした。
これはよく言えば、構成が完成しているとも言えますが、
逆に悪く言えば、代り映えがしない、とも言えます。

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前作の「なぜ、間違えたのか?」では、特徴的な扉絵があるため、
各章での言いたいことが視覚的にとらえられたのですが、
残念ながら今作では、文章のみの展開になってしまったので、
そういう意味でも一歩後退しているような感じがしなくもありません。

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とはいえ、まとめかたはあいかわらずうまく、
事例の紹介のしかたも、小説家である著者らしい、
ストーリーが前面に出てきた切り口になっています。

そして、各章最後に、結論をきちんと書いてくれているので、見直すときに便利です。

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こういった本は、日本で言えばメンタリストDaigoさんあたりが書きそうですが、
どうしてもイメージ展開が理屈っぽくなってしまいがちです。

メンタリストDaigoさんも、一時期ストーリーによる説明を意識した本を出していましたが、

限りなく黒に近いグレーな心理術
メンタリストDaiGo
青春出版社
2015-05-30



あまりうまくいかなかったのか、撤退してしまいました。

そういう比較で言えば、本書は説明のうまさ、
特にストーリーテリングが、長所と言えるのではないかと思います。
説明の切り口が、とにかくうまいです。

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特に面白かった章を、以下、目次から抜粋していきます。

全部で52章に分かれているのは、前作と同じです。
52という数字に、なにかあるのでしょうかね?
(4×13なので、トランプの枚数ですね。)

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1.新年の抱負が達成できないわけ【先延ばし】
3.比較しすぎると、いい決断ができなくなってしまうわけ【決断疲れ】
6.労力をかけたものが、大事に思えるわけ【努力の正当化】
10.現状維持を選んでしまうわけ【デフォルト効果】
14.予定を詰め込みすぎてしまうわけ【計画錯誤】
18.あなたが自分の感情の操り人形なわけ【感情ヒューリスティック】
23.小さな店舗が突出して見えるわけ【少数の法則】
25.平均的な戦争が存在しないわけ【平均値の問題】
27.統計の数字よりも、小説のほうが心を動かすわけ【心の理論】
30.占いが当たっていると感じるわけ【フォアラー効果】
34.あなたが常に正しいわけ【歴史の改ざん】
36.「王者」になったほうがいいわけ【ねたみ】
39.ハンマーを手にすると、何もかもが釘に見えるわけ【職業による視点の偏り】
42.お金を寄付したほうがいいわけ【ボランティアは浅はかな考え】
44.的には情報を与えた方がいいわけ【情報バイアス】
45.ニュースを読むのをやめたほうがいいわけ【ニュースの錯覚】
46.危機が好機になることがめったにないわけ【起死回生の誤謬】
48.チェックリストに頼りすぎてはいけないわけ【特徴肯定性効果】
50.「最後のチャンス」と聞くと判断が狂うわけ【後悔への恐怖】
52.学問だけで得た知識では不十分なわけ【知識のもうひとつの側面】

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なお、本書の最後には、それぞれの参考文献もきちんと明示されています。
さすがに、未翻訳のものがおおいですが、なかには日本語で読めるものもありますので、
本書が面白いと思った方は、そちらに挑戦してみるのもいいかもしれません。

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